北朝鮮:潜水艦ミサイル発射実験「成功」…開発初期か

毎日新聞 2015年05月09日 11時27分(最終更新 05月09日 12時34分)

北朝鮮の労働新聞が9日掲載した金正恩第1書記(手前)が視察する前で、潜水艦から発射された弾道弾
北朝鮮の労働新聞が9日掲載した金正恩第1書記(手前)が視察する前で、潜水艦から発射された弾道弾
北朝鮮の労働新聞が9日掲載した、潜水艦から発射された弾道弾
北朝鮮の労働新聞が9日掲載した、潜水艦から発射された弾道弾

 【ソウル米村耕一】北朝鮮の国営朝鮮中央通信は9日、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が見守る中で戦略潜水艦の弾道ミサイル水中発射実験に成功したと報じた。北朝鮮による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の開発は米軍などが指摘していたが、北朝鮮が自ら認めるのは初めて。

 SLBMは、核兵器の運搬手段となり得る。北朝鮮による開発は初期段階である可能性が高いが、最終的に成功すれば、日米韓の安全保障体制にとって更なる脅威となる。

 朝鮮中央通信によると、試験発射は金第1書記の命令によって始められた。同通信は、潜水艦内の騒音やミサイルが水面から飛び出す速度、発射角度などの面で目標水準に「完全に到達した」と伝えた。金第1書記は「素晴らしい、成功だ」と述べたという。

 実験の日時や場所は明らかにされていない。ただ、米ニュースサイト「ワシントン・フリービーコン」は5日、米国防総省筋の話として、北朝鮮が4月22日に北朝鮮東部の咸鏡南道(ハムギョンナムド)・新浦(シンポ)付近でミサイルの水中発射実験を行ったと報じていた。新浦には、潜水艦基地が置かれている。

 朝鮮中央通信は「戦略潜水艦の弾道弾が量産に入り近日中に実戦配備されれば、敵対勢力の背中に時限爆弾をつけたことになる」との金第1書記の発言も伝えた。まだ開発途中の段階にあることを認める発言であり、実際の配備までには時間がかかることを示唆するものといえる。

 北朝鮮のSLBM開発を巡っては、米ジョンズ・ホプキンズ大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が昨年10月、民間衛星写真の分析から、開発のためとみられるミサイル発射試験台が新浦造船所に設置されていることなどを伝えていた。

 北朝鮮はロシアから輸入した潜水艦をもとに、ミサイル発射能力のある新型潜水艦を開発したとみられている。

 ワシントン・フリービーコンは昨年8月、北朝鮮がミサイル発射可能な潜水艦を建造中だとみられると報じていた。

 ◇米「決議違反」

 【ワシントン和田浩明】北朝鮮の朝鮮中央通信が弾道ミサイル水中発射実験に成功したと報じたことについて、米国務省報道官は直接的な確認は避けた上で、「弾道弾技術を使った発射は複数の国連安保理決議違反にあたる」と指摘。北朝鮮に「国際的約束、義務の履行に向け具体的措置を取ることに集中すべきだ」と呼びかけた。

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