山下奈緒子
2015年5月9日10時10分
昨年5月放送のNHK「クローズアップ現代」で「記者の指示によるやらせがあった」と指摘された問題で、NHKの調査委員会は4月末、最終報告として「事実のねつ造につながるいわゆる『やらせ』はないが、『過剰な演出』や『視聴者に誤解を与える編集』が行われていた」と公表した。今回の報道は何が問題だったのか、テレビ報道における「やらせ」とは何か、在阪の放送局関係者や専門家に聞いた。
■各局、チェック体制模索
そもそも、「やらせ」の境界線はどこにあるのだろうか。
毎日放送報道局の大牟田聡番組センター長は「撮影がなければやらないことをやってもらうことはNG」と前置きした上で、「本質に関わるところでうそをついてはいけない」と話す。
よりよい映像を撮るために、取材時に同じことをもう一度繰り返してもらって撮影するケースはある。しかし、その映像がなければ伝えたい内容が成立しないような場面を撮り直すことはないという。
報道番組の撮影は記者にカメラマン、音声スタッフら複数で行われることが多い。局内で映像を編集するスタッフなども含め、放送までに多くの人の目に触れる。加えて、チェック体制を整えている局もある。
朝日放送では、1992年にドキュメント番組内でやらせが発覚後、チェック体制を強化した。部署の垣根を越えて会議を開き、放送内容の是非を検討しているという。藤田貴久報道企画担当部長は「裁判になっても負けない証拠を持つこと。(取材対象の)本人が言った以上の裏付けが必要だ」と指摘する。
「クローズアップ現代」で問題となったシーンでは、隠し撮りのような映像や、顔を隠したインタビューなどが使われた。
ある在阪の放送関係者は「テレビは潜入取材や隠し撮りをしたような映像を好む。リアリティーがあるような気がするからだ」と話す。そのため、隠し撮りなどの取材手法が必要かどうか、幹部が事前にチェックする放送局もある。
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