先に特別永住者については強制送還は不可能なこと(リンクは
こちら(2月26日のエントリー)と
こちら(5月2日のエントリー)),一般永住者については強制送還は不可能ではないが非常にまれなこと(リンクは
こちら(5月2日のエントリー))を説明したところ,さすがに特別永住者までが強制送還の対象だというようなおかしな言説は鳴りをひそめたようである。
しかし今度は特別永住者に対する兵役実施に伴って該当者の再入国禁止と帰化取消への期待感が急速に高まっている。
これについてもかなり誤った言説が流布しているように思うので,当方の主張を述べておきたい。
まず基本的に特別永住者の兵役についてどの程度厳しく実施されるかは確定的なことは言えない。なぜならそれは日本政府ではなくひとえに韓国政府が決定することだからである。
したがって日本側としては近い将来に完全実施されるという前提で議論を進めるしかない。
1.再入国禁止
特別永住者を含め在留外国人の再入国を規制している条文は入管法26条である。
「第二十六条 法務大臣は、本邦に在留する外国人(・・・。)がその在留期間(・・・)の満了の日以前に本邦に再び入国する意図をもつて出国しようとするときは、法務省令で定める手続により、その者の申請に基づき、再入国の許可を与えることができる。
3 法務大臣は、再入国の許可を与える場合には、当該許可が効力を生ずるものとされた日から五年を超えない範囲内においてその有効期間を定めるものとする。
5 法務大臣は、再入国の許可を受けて出国した者について、当該許可の有効期間内に再入国することができない相当の理由があると認めるときは、その者の申請に基づき、一年を超えず、かつ、当該許可が効力を生じた日から六年を超えない範囲内で、当該許可の有効期間の延長の許可をすることができる。」
これには外国で兵役に就いたからといって再入国を禁止するような規制はない。具体的な要件は法律の条文には書かれていないが,最初の入国の時と同じと考えてよいだろう。
ちなみに入管特例法において特別永住者の再入国に関する規定は次の2つだけである。
「第二十条 特別永住者であって、入管法第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者に関しては、入管法第七条第一項中「第一号及び第四号」とあるのは、「第一号」とする。」
「第二十三条 特別永住者に関しては、入管法第二十六条第三項中「五年」とあるのは「六年」と、同条第五項中「六年」とあるのは「七年」とする。」
当然のことながら一般の外国人よりも有利な取扱いがなされている。
どんなに兵役や兵役拒否による懲役が長引こうとそれが7年を超えることはないだろう。
では今後,再入国禁止の規制が設けられる可能性があるかだが,それは困難だと当方は思う。
まず全世界を対象にしてということが不可能なのは自明である。
逆に韓国だけというのもおかしいのは明らかだろう。
理屈が通るのは敵国,すなわち我が国の主権を侵害している国家を対象とするものである。
具体的に言えば,北方領土のロシア,竹島の韓国,拉致問題の北朝鮮は当然であり,尖閣問題の中国はグレーゾーンである。
しかしこれも現在の政治状況ではあり得ないと言ってよいだろう。
2.帰化取消
これについては5月4日のエントリーで,
「
おそらく違法な帰化による取消でない限りは,従前の身分が復活するというのが普通の考え方ではないか。
したがって特別永住者の多い在日南北朝鮮人については特別永住者資格が復活するということになろう。
そうすれば当方の主張では結局,強制送還はないという結論にしかならない。」
と書いたところである(リンクは
こちら)。
したがって余り議論する実益はないと感ずるのであるが,レアケースとして一般永住者から帰化ということもあるので念のため当方の見解を主張しておきたい。
まず前提として現在法務省は帰化の要件について「
審査基準 ありません。」としている(リンクは
こちら)。
また具体的にこういう報道もある。
平成25年5月7日のJ-CASTニュースは,”
「在日に兵役」情報で2ちゃん騒然 韓国大使館「まったく根拠のない話」
韓国の兵務庁が在日韓国人に兵役に就くよう呼びかけると韓国メディアが報じたとの情報が2ちゃんねるに流れ、祭り状態の騒ぎになっている。韓国大使館は、「まったく根拠のない話」だとその情報を否定している。
2ちゃんなどでは、在日韓国人は兵役に就かないと韓国籍を離脱できないよう法改正され、日本に帰化できなくなったとの情報も出回っている。これについて、韓国大使館の担当者は、「聞いたことがない」としており、法務省の民事第1課でも、「韓国で兵役に就いたかどうかは、審査の判断材料にはならず、帰化とは関係がありません」と説明している。”と報道した(リンクは
こちら)。
「
法務省の民事第1課」が帰化の担当部署であることは当方も平成24年2月29日に訪問して帰化に関して質問しているから間違いはない(リンクは
こちら)。
その担当部署が「
韓国で兵役に就いたかどうかは、審査の判断材料にはならず、帰化とは関係がありません」と言っているのだから信用するほかない。
以上を念頭に置いて考えるのであるが,そもそも現在の国籍法には帰化取消の条文はない。
あるのは5月4日のエントリーで紹介したように国籍法15条3項の国籍選択の規定だけである。
しかし5月2日のエントリーで書いたように,「
もちろん行政行為の一般原則として法律に根拠があろうとなかろうと行政行為の取消は可能である」。
したがってこの場合,2重国籍者が国籍法15条3項で我が国の国籍を選択したときにも取消が認められるかどうかが問題になってこよう。
現在の通説では国籍付与のような授益的行政行為の場合,その取消には「公益上の理由」を必要とすると解釈されているようである。
現実の裁判になった場合,結果がどちらに転ぶかは断定はできないが,本人が日本国籍を選択し,現実にさほど問題がない以上,「公益上の理由」が認められる可能性は小さいのではないかと思う。
そして「公益上の理由」とは直接関係がないが,そもそも授益的であれ侵害的であれ,行政行為の取消には相手方に重大な違法性が必要ではないかと思う。
具体的に言えば,今噂されているように,後発的に韓国国籍が付与されるような場合は全く考慮の必要性はない。
問題は元々,韓国国籍を持っており我が国に帰化してもそれを放置していた場合だが,それでも本人が日本国籍を選択した以上,違法性は認められないと解釈されるのが順当ではないかと思う。
- 2015/05/08(金) 23:55:23|
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