英国で投開票が行われた総選挙で、読売新聞などは5月8日付夕刊(最終版)で、英BBCなどの出口調査をもとにキャメロン首相が率いる保守党が第1党を維持するものの、単独過半数には届かないことが確実であるかのように報じた。しかし、開票の結果、保守党は下院の定数650の半数を上回る331議席を獲得した。
読売新聞(左)と毎日新聞の2015年5月8日付夕刊
5月8日付全国紙夕刊のうち見出しで「過半数は届かず」と記載したのは、読売新聞、産経新聞大阪本社版夕刊。読売は本文リードでも「どの政党も過半数に達しない『ハング・パーラメント(中ぶらりん議会)』となるのは確実な情勢」と報じていた。毎日新聞は見出しで「過半数届かず」とは記していなかったが、リードで「前回2010年総選挙に続き、どの政党も過半数に届かないハング・パーラメント(宙づり国会)となる」と伝えた。いずれも見出しに「出口調査」とも記載し、英BBCなどの出口調査を根拠にしていることは明記されていたが、開票途中にもかかわらず保守党が過半数に届かないことが確実であるかのような印象を与える報道だった。
毎日新聞によると、英総選挙の投票が締め切られたのは8日午前6時(現地の7日午後10時)。8日付夕刊は、同日午後1時15分(現地時間同日午前5時15分)時点のBBC開票速報を踏まえたもので、定員650のうち確定したのは343議席、保守党は126議席だった。
他方、朝日新聞は8日付夕刊で保守党が過半数に届く見通しかどうかには直接触れず、「保守党は過半数に満たない場合でも自由民主党との再連立ではなく、単独での少数与党を選ぶ可能性もある」と伝えるにとどめていた。日本経済新聞も「単独で過半数に届くかが焦点」と予断を排する報道をしていた。
なお、朝日は、投開票前の5月4日付朝刊で「英国総選挙 政党の役割問い直そう」と題する社説を掲載していた。世論調査で保守党が過半数に届かない情勢であることを指摘した上で「これは一時的な現象ではなく、二大政党制の終わりを示していると多くの専門家は考えている」「英国の変化を機に、政治と民主主義を幅広く論じたい。二大政党制の限界を検証するとともに、多党化時代の政党の役割を問い直すときだ」などと、総選挙で保守党が過半数割れすることを前提とした主張をしていた。
英保守党 第1党へ 総選挙 過半数は届かず…BBC出口調査
7日投票の英総選挙(下院選、定数650)は一部の選挙区を除き即日開票され、英BBCなどの出口調査によると、キャメロン首相(48)率いる保守党が第1党の座を維持する見通しだ。ただ、単独過半数には届かず、2010年5月の前回選に続き、どの政党も過半数に達しない「ハング・パーラメント(中ぶらりん議会)」となるのは確実な情勢となっている。…(以下、略)読売新聞2015年5月8日付夕刊1面
英キャメロン首相続投へ 保守党第1党維持 総選挙出口調査
英国の下院総選挙(定数650議席、任期5年)は7日午後10時(日本時間8日午前6時)に投票が締め切られれ、開票作業が始まった。BBC放送などの出口調査によると、キャメロン首相率いる保守党が過半数に届かないものの解散時よりも議席を上積みし、第1党を維持する公算が大きくなった。前回2010年総選挙に続き、どの政党も過半数に届かないハング・パーラメント(宙づり国会)となるものの、現在連立を組む自由民主党などと合わせて過半数を確保できる可能性が高まっており、キャメロン政権の継続が濃厚となっている。…(以下、略)毎日新聞2015年5月8日付夕刊1面
英総選挙 保守、第一党維持へ 出口調査 過半数は届かず
7日投票の英総選挙(下院定数650)は即日開票された。BBC放送などの出口調査に基づく予測では、キャメロン首相(48)率いる与党保守党が316議席を獲得し、第一党を維持する勢い。最大野党の労働党は239議席にとどまる見通しだ。…(略)…
保守党が予想通り勝利すれば、キャメロン氏が続投する公算が大きいが、単独過半数(326)には届かず、「ハング・パーラメント(中ぶらりん議会)」となるもようだ。このため開票結果を待って、過半数確保に向けた他党との連立協議を始めるとみられる。…(略)…
保守党は、自民党、北アイルランドの地域政党などと連立を組むことで、過半数に届く可能性がある。産経新聞(大阪本社版)2015年5月8日付夕刊1面
- (初稿:2015年5月9日 06:00)