ソニーが業績見通しを上方修正。
少し古い話になるが、4月にソニーが業績の上方修正を発表した。
めでたいことに、テレビ事業も11年ぶりに黒字に転換したらしい。
だが、色々調べていくと、これを素直に喜んでいいんだろうか?と、なんとなく思ってしまう。そんな決算発表だった。
ソニーの好調を支える…金融。
売上高は前年同期比6.5%増の6兆2781億円。営業利益は20.3%増の1663億円。各メディアで「好調」と言われただけのことはある数字だ。
セグメント別の営業利益をざっくりと見てみると、
- モバイルが△1654億円
- ゲームが537億円。
- カメラが604億円。
- AVが409億円。
- デバイスが966億円。
- 映画が130億円。
- 音楽が486億円。
- 金融がなんと1423億円。
と、各セグメントとも、モバイル以外はだいぶ持ち直したのだが、やはり金融の凄さが突出しているのが、いまのソニーをある意味象徴しているといえるだろう。
今にして思えば、盛田氏が社長だった時代に金融業を始めると聞いた時には、「ソニーはどこを目指しているんだろう?」などと思ったものだが、まさかその金融がソニー全体を支える程に成長するとは思いもよらなかった。
先見の明があったということなのだろう。
デバイス好調の理由はiPhone。
金融の次に儲かっているのが、イメージセンサーなどを担っているデバイス事業だ。
聞いただけだとスマホ関連事業っぽく聞こえるが、これはスマートフォンに搭載される裏面照射型CMOSセンサー等の製造が主な事業内容だ。だが、モバイルコミュニケーションの分野が大幅な赤字であることを見るまでもなく、Xperiaが売れているから儲かっている…ということではない。
実はここが好調な理由は、iPhoneにソニーのイメージセンサーが搭載されているからなのである。
下記記事にざっくりした事が書かれているので引用するが
過去のiPhoneシリーズにはおおよそソニー製のイメージセンサーが搭載されており、これは次期iPhoneとなるiPhone6sシリーズでも継続が予想されています。
(中略)
ソニーはiPhoneが1台売れるごとに20ドル(約2,400円)の利益を得ているとされています。アップルは第1四半期の決算において、8,000万台近くのiPhoneを販売したと発表しているので、ソニーはiPhoneのイメージセンサーによる利益だけで、2,000億円近くを荒稼ぎした計算となります。
ということで、iPhoneが売れれば売れるほど、ソニーも儲かるということらしい。
揺れるXperia戦略。
例年、Xperiaの新機種は、世界最大の携帯電話見本市である「Mobile World Congress(以下MWC)」で発表されていた。が、今年はそこでは発表せず、その1ヶ月後の4月に単独で発表会を行ってわざわざ発表したのだ。しかも日本で。
何故、せっかく世界が注目している「MWC」で端末を発表せずに、わざわざ国内で発表したのだろうか。おそらく、Xperiaの戦略が今までとは違ってきているという事なのだろう。
モバイル事業が最近大幅な赤字を計上している最大の原因は、海外での販売不振だ。iPhoneやGALAXYのように、ハイエンドモデルをワールドワイドで売ろうとして失敗したのだ。海外では、やはりハイエンドを買うならiPhoneのようなメジャーな端末が選ばれるのである。いくらジェームズ・ボンドが使っていようが、なかなか海外の人はXperiaを買ってはくれないのだ。
だが、日本においてはまだXperiaはハイエンドモデルというイメージがある。なので、日本で最初に発表会を行ったのだろう。というより、ハイエンドモデルは日本を中心に売っていくという方針なのかもしれない。
もはや、国内主要3キャリア全てで販売されることになったXperia。少しでも利益率の高い日本で、1台でも多く売りたいとのソニーの思いが透けて見える。
国内ではXperiaを、海外ではセンサーを。
正直、モバイル部門が国内需要だけで立て直せるとは思えない。だから、ひょっとしたら、日本国内においてもXperiaの「ハイエンドモデルというビジネススタイル」は、変わっていくかもしれない。格安スマホにXperiaが登場したように。
一方海外では、堅調なiPhone向けのイメージセンサー供給戦略が、今後もしばらくは続くのだろう。とはいえ、ソニーのセンサーはiPhoneにだけ入っているのではない。実際、イメージセンサーの世界シェアではソニーが40%超を獲得して首位なのである。
というわけで、ソニーがスマホ市場でこの先生きのこるには、Xperiaを売るよりも、高品質なイメージセンサーを売りまくるしかない。そして、その為の投資のお金は、きっと金融事業が作ってくれるだろう。
いや、実際、企業としては正しいことなんでしょうけどね。
でも…
わしは、そんなソニーは見とうはなかった…