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音を操るプロフェッショナル、内田学(Why Sheep?)の音楽論

インタビュー・テキスト:萩原雄太 撮影:相良博昭(2015/05/08)

中谷美紀・神野三鈴という二人の女優によって、パルコ劇場を始め、全国で上演される舞台『メアリー・ステュアート』のクレジットをよく見ると、サウンドデザインとして「内田学」という名前がある。思わず見過ごしてしまいそうな何の変哲もない名前だが、彼のソロプロジェクト名が「Why Sheep?」であるということを知れば、驚く人は少なくないだろう。エクスペリメンタルなサウンドで国際的に評価を受けるWhy Sheep?や、サウンドアートプロジェクト「枯山水サラウンディング」など多岐にわたる活動をする内田が、今回実名で挑戦する舞台が『メアリー・ステュアート』なのだ。

ルネサンス期のイギリスを舞台にした同作品にリュート奏者らとともに挑む内田は、いったいこの世界観をどのようなサウンドで彩るのだろうか? 昨年、Chim↑Pomにインスパイアされた作品を突然リリースするなど、いまだ謎も多いミュージシャンとの対話は、総合芸術である演劇における音楽のあり方へ、そして音楽と人との関係の話へと発展していった……。

PROFILE

内田学(うちだ がく)
1996年にWhy Sheep?の1stアルバム『sampling concerto no.1 “the vanishing sun” op.138』をリリースし、国内外のメディアで大きな反響を呼ぶ。その後、世界各国を放浪後2003年に2ndアルバム『The Myth And i』が日、欧、米と世界発売される。国内外での公演を精力的にこなす一方、数々のリミックスや映画のサントラ、プロデュース等を手がける。2007年には、音を禅の作庭術になぞらえたサウンドアートプロジェクト「枯山水サラウンディング」を立ち上げクリエイティブディレクターを務める。2014年、UAや海外のアーティストが参加した集大成ともいえる3rdアルバム『Real Times』をリリース。
| why sheep? official website
karesansui surrounding | 枯山水サラウンディング

僕はジョン・ケージからの流れでミニマルミュージックに辿り着き、そこから「サウンドスケープ」という概念に影響を受け、ハウス、エレクトロニカに辿り着いた人間なんです。

―内田さんは、Why Sheep?としてデビューから20年近いキャリアがあるにも関わらず、3枚のアルバムしかリリースしていない謎めいたアーティストでもあります。普段はどのような活動をされているのでしょうか?

内田:Why Sheep?の他には、枯山水サラウンディングという、サウンドアート / インスタレーションを制作するプロジェクトでクリエイティブディレクターを務めたり、あとは映画のサントラなど、いずれも音に関わる仕事をしています。

内田学
内田学

―細野晴臣さんのアシスタントをされていたこともあったとか?

内田:大昔ですけどね。駆け出しの頃にスタジオ作業だけ手伝わせてもらいました。「この線をあっちにつないで」とか教えてもらいながら。ああ、こうやってスタジオ作業が進んでいくのかって、勉強させてもらいました。

―枯山水サラウンディングのウェブサイトで過去のプロジェクトを拝見しましたが、公共施設からアートプロジェクトまで、Why Sheep?のイメージに留まらない、かなり幅広い分野で音楽制作をされている印象でした。

内田:僕はもともと現代音楽を勉強していて、ジョン・ケージからの流れでミニマルミュージックに辿り着き、そこからレーモンド・マリー・シェーファー(カナダを代表する現代音楽の作曲家)が提唱した「サウンドスケープ」という概念に影響を受け、ハウス、エレクトロニカに辿り着いた人間なんです。だから、一応は全部つながっているんですけどね(笑)。

―サウンドスケープは、日常の環境にある「音の風景」に注目し、デザインすることを目指したものですね。

内田:同じ現代音楽でも、スティーブ・ライヒはあくまで「音楽」ですが、ジョン・ケージからサウンドスケープまでの流れは、旧来の音楽というより禅の思想に近い気がします。そこに興味があって枯山水サラウンディングを始めたというのもあります。


枯山水サラウンディング『蟲聴きの会 2013(奉納編)』

―東洋的な要素を取り入れた音楽、ということでしょうか?

内田:西洋音楽をベースに生まれた現代音楽は、基本的に鍵盤、ドレミの世界でした。そこに無調音楽という不協和音の音楽が流行ったり、ジョン・ケージが禅の思想を持ち込んだり、それ以降はなんでもあり。ジョン・ケージからミニマルを経て、サウンドスケープ、ハウス、エレクトロニカにつながったのも変な話じゃないんです。スティーヴ・ライヒの“Come Out”は、テープを同時再生することで音をずらしていくミニマルミュージックですが、それはコンセプトとオープンリールというテクノロジーが偶然出会ったことで実現した。ハウスもサンプラーによって音楽が楽器の音から開放されることで生まれましたが、それはサウンドスケープが日常の環境音に注目したのとつながります。ジョン・ケージだって同時代にサンプラーに出会っていれば、エレクトロニカをやっていたんじゃないかな。

―あくまでも、テクノロジーと文化は切り離せないわけですね。枯山水サラウンディングでもいろんなテクノロジーを駆使して、自然環境音をテーマにしたインスタレーションを制作されています。

内田:『多摩川アートラインプロジェクト』では、「多摩川」やその流域で古代から続いてきた人の営み、古墳群などをテーマにしたインスタレーションを制作しました。水源である山梨県の笠取山まで最初の1滴の音をフィールドレコーディングしに行って、逆に河口流域である羽田空港のあたりでは波の音をサンプリング。その間の渓流の音も録ってミックスした「音による多摩川」を、東急多摩川駅に設置したインタラクティブサラウンドシステムで表現したり。その続編にあたる作品を大田区役所のロビーに設置したり。残念ながら今はもう聴けないんですが、そんなことばかりやっていたので、Why Sheep?のアルバムが出なかったんです(笑)。


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