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03年に法律ができて以来、初めての本格的な改正となる個人情報保護法案の…
03年に法律ができて以来、初めての本格的な改正となる個人情報保護法案の審議が国会で始まった。
情報通信技術の発達で、この12年間に個人データをとりまく環境は様変わりした。パソコンや携帯電話だけでなく、テレビや自動車、あらゆるモノがネットに接続される時代だ。買い物履歴や位置情報が蓄積されて個人の好みや行動を企業が把握できるようになった。
その結果、思ってもいない形で個人が特定されたり、他人に知られたくない情報が本人の承諾がないまま使われてしまったりする危険も生じている。
JR東日本が13年、ICカード「Suica」の乗降履歴情報を、本人の承諾なしに別の企業に販売。個人名は消してあったものの、乗降駅の履歴を長期間たどれば個人が特定されかねないと批判を浴びて中止したことは記憶に新しい。
個人名を消しているため、Suicaのケースは現行法には触れず、現状に法律が追いついていないことを浮き彫りにした。また、監督官庁も業種ごとにばらばらで、その数は13省庁に及び、「プライバシー保護」を専門に見る体制に欠けていた。改正は当然だろう。
今回の改正では、個人情報保護委員会を設置し、何が個人情報かの範囲をはっきりさせて企業が勝手に流通できなくさせることを狙う。会社に無断でデータを持ち出した社員に対する罰則も新たに設ける。
同時に、個人情報データの適正な活用を通じて新産業の創出や経済活性化もうたっている。個人を識別できないように加工したデータであれば、本人の同意がなくても第三者に提供できるようにしている。
確かに、集積される個人情報は企業に新たなビジネスの機会を生んでいる。特定の場所、時間帯に集まる人の動きに合わせた営業も可能になるし、個人の好みに沿った商品の紹介もできるだろう。
しかし、経済の活性化につなげると言っても、「自分のデータが勝手に使われないか」という不安が残るようでは、掛け声倒れに終わりかねない。結局、十分なプライバシーの保護を果たせるかどうかがカギになる。
情報通信技術は、日進月歩である。現実に法律が追いつかない局面は今後も出てくるだろう。法令を通じた政府規制のほかに、企業側の自主規制も含めて、本人の意に沿わない個人情報の流通を防ぐことが求められる。今回の法改正をその一歩としてほしい。
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