イラストコミュニケーションサービス[pixiv(ピクシブ)]

pixivへようこそ

お気に入りの作品はありましたか？
pixivに登録するともっとたくさんの作品を見たり、投稿者の方と交流することができます。

今日の続きをしましょう？

伊織

2013年02月15日 22:52

先日投稿したアレの小説的な？

a a a

「これできっと全部だ。」
ドサッと鈍い音を立てて本が積み立てられ、それと同時に埃が舞う。魔理沙は私が喘息持ちだということを忘れてしまったのか。
「にしても魔理沙、貴方が私の図書館に盗みに入る以外で来るなんて珍しいわね。」
「ましてや本を返しに来ただなんてな。」
ふんっと鼻を鳴らして得意げに腰に掌を当て胸を張る貴方。言わないでおくけど借りたら返すのが人間の当然のマナーでしょう？
「まあいいわ。こんなことこれからはきっとないでしょうし、記念なんて言ったら可笑しいかもしれないけど咲夜にお茶でも淹れさせましょう。そしてちょっと私の話し相手にでもなっていったらどうかしら？」
「悪いな、新しい魔法の研究をしないといけないんだ。今日はもうお暇するぜ。」そして、返しにきたのはそれの邪魔だったからなのだと付け足す。ちょっと見直したと思ったのに期待通り裏切ってくれるわね。私は魔理沙から視線を外してアーロンチェアーを少しだけ揺らす。
「こんな季節だからキノコもきっと沢山採れるわ。精々精進なさい。」
「魔法の森にいいキノコが生えていない季節なんかあるとでも思ったか？」
声を聞いただけで魔理沙が歯を出し、目を細めて笑っている顔がいとも簡単に想像できる。単に分かりやすい人間なのか、はたまた日頃の付き合いの為なのか私にはわからない。どうでもいいことだと思ってるのに自然と頬が緩んでしまった。
「そうね、まあ頑張りなさい。」と視線を戻した時にはもう姿は無くて開けっ放しにされたドアから冬の風と柔らかい日の光が入り込む。

「ねえ小悪魔。この本を片付けて貰っていいかしら？」

[newpage]

さっと目算すると返された本は100冊にも満たない程度だった。
一冊一冊数えるのは数字が大きくなる度に彼女が煩わしく感じそうだからしない。それに面倒だし。
近くの本に手を伸ばしてページをぺらぺらと捲ってみる。言うまでもなく魔法関係の解説書でなんとなくケミカルな匂いがする。
「研究にだけは熱心ね。それよりももっと学ぶべきものがあるでしょうに...」
「全くね。」
「ひゃっ！」
「なによそんなあなたらしくない声を上げちゃって。」
「ちょっと驚いただけよ！でもアリス、来たなら来たと言って頂戴。」
「来たわ。」
「いらっしゃい。」

アリスは私の向かいに腰掛け、頬杖をつき、上の方を虚ろな目で眺める。一体何なのよ。
「で、何しに来たの？」
「さっき、魔理沙にあったわ。」
「応えになってない。」
「特に理由は無い。」
「昨日もそんなこと言ってたわね。本当のところ、どうなのよ。」
「貴方を見に来ただけ。」
「私は天井にはびりついてなんかないのだけれど。」
「...。」
本格的に訳が分からない。

[newpage]

昨日の晩もアリスは突然やってきた。いつものように読書に耽っていた私にとって正面に腰掛けていた彼女の存在が邪魔に感じてならなかった。だから時折、多分睨むような目で彼女に視線を送ったりしすると、その度に顔を背けられた。口は少々強く結ばれていて、机上のランプに灯された炎の光が照り返った所為なのか顔が赤らんでるようだった。
無論そんな状況では煩わしくて集中なんかできない。だから彼女が訪れてから一時間としないうちにそのまま寝てしまったと思う。彼女がいつ出て行ったのかはわからないけど、ランプの油がそれなりに残ってたから早いうちに立ち退いたのだろう。火を消していってくれるなんてちょっと頼もしい。でも私のライフワークの邪魔なんかしないというのが一番いいのだけど。

[newpage]

そして今日も来た。
絶対にここに来ている理由があるに違いない、だから探りを入れてみようかしら。
「アリス、昨日はランプの後始末をしてくれたようね。感謝するわ。」
「当然の事をしたまでよ。」
素っ気ない。ちょっと意地悪に言ってやりましょう。
「時にアリス、昨日といい今日といいここにくるのにはやっぱり理由があるのでしょう？いい加減白状したらどうかしら？」
ここでやっと彼女は正面を向く。
相変わらず虚ろな目をしたままだけど。
「さっき魔理沙にあったわ。」
「関係あるの？それ。」
「手持ち無沙汰に立ち話をしたわ。そしたら図書館の帰りで今から数日は籠りっきりになるそうよ。」
「それと私はどう関係があるのよ！」
「魔理沙ったら、そんなことを楽しそうに話すものだから...、きっとあなたと楽しい会話を交わしていたんだなって。」
「だから！！」
「魔理沙が羨ましかったの。今日だけじゃ無いわ。いつもあの子に会うたびそうだったから...。」
「...。」
言葉が詰まる。何なのよ、一体。

「昨日の夜、私がここにきた後、貴方すぐに寝ちゃったでしょう？」
無言で頷く。
「その後どうしたか覚えているかしら。」
首を左右に振る。
「知りたい？」
「...。ええ。」
咄嗟に周りを確認する。どうやら小悪魔は遠くの書架までいったようね。
「面と向かって言うのってやっぱり恥ずかしいから机に伏して貰ってもいいかしら。」
なによ、そんなに言いづらいことしたの？まあここで従わない理由も無いわ。
伏せる。

[newpage]

ガタッと立ち上がるような音がした。それから、近付いてくるような足音が聞こえてくる。カツ、カツという音だけが頭の中に響くと同時にちょっとした恐怖心からか心臓の鼓動もはっきりと聞こえる。私はただ、拳に力を込めることしかできなくなってしまったみたいだ。

[newpage]

いい香りがする。どこか春の花畑を想起させるような甘い香り。
自然と拳の力が抜けてさっきまで何を考えていたのか、なにに恐怖抱いていたのか、そんなことまでわからなくなった。
肩から背中にかけてになにか重みを感じる。判断が遅れたけどはっきりと分かる。ああ、そう、きっとアリスの重みね。それと同時に頭に彼女の右腕、首元に左腕がまわされ、触れる指には力がこもって少しだけ痛い。
左の耳元で、彼女のはぁはぁという乱れた息づかいを確かに感じる。触れる吐息がすごくくすぐったい。

[newpage]

何秒の間だったろうか、暫くそのままでいた後、遠くから小悪魔の足音がした為かアリスは即座に腕を解いて私の正面に戻った。
起き上がった今の私の顔は紅潮してたに違いない。昨夜、こんなことがあったのね。恥ずかしくてアリスをまっすぐ捉えられないのだけれど、それは私だけではないようみたい。
「...。」
「...。」
「...ごめんなさい。」
アリスが一言漏らす。でも微かに私の周りにまとわりつく彼女の香りが私にそれに応えるのを許さなかった。そしてまた無言。

[newpage]

突然、正午を告げる時計の鐘が響き渡った。荘厳な音色の振動が私を正気に戻す。
「アリス。」
「何？」
「どういうことなの？」
「説明が欲しいの？貴方はそんなに鈍感なのかしら。」
強がっているような言葉だけど、最後の方になるにつれて声がしょぼくれていた。
「...。そう、アリス、貴方は私の事が...。」
「それ以上言わないで！」
吐き捨てるような言い方。
「分かったわ。でもそういう事なのね。」
俯いたままで反応がないけど間違いはないでしょう。
「でもどうして？」
「...。」
「聞いてるじゃない。」
「そんなことに理由が欲しいの？」
「当たり前でしょ。」
「うっ...。」
「早く言わないと私寝ちゃう。」
「言うわよ...。」
「早く。」
なんかちょっと嬉しい気がするわね。それに反応がいちいち可愛い。

「初めはね、その、ただ同じ魔法使いとして尊敬してただけなの。だって貴方凄いもの。」
黙って聞く。
「だけどね、見てるうちにね、あ、あなたの姿、白い肌とか髪とか、何もかもが愛おしくなってきて...」
「...。」
「それでね、貴方が魔理沙と仲が良さそうにしてるのを見た所為で嫉妬心が、余計に私を駆り立てて...。」
「別に仲良くしてた訳では無いわ。」
「で、でも！あなたが声を荒げてたりする相手って魔理沙以外にいないからそれだけ特別な人なのかなって。」
「盗難にあってるのだから当然よね。」
「でもさっき、ね、私にもそうしてくれたから、そ、その、すごく嬉しくて...。」
「...。」
「...もういい？」
「ええ。」
お互いの顔を見ないまま時間が過ぎる。実際はどうか分からないけどかなり長い間そのままじっとしてたと思う。

[newpage]

今まで何百年と生きてきたけれど、こんなイレギュラーな出来事なんてありはしなかったから正直全く意味が分からないけど嬉しく思っているのも本当だった。
まだまだ駄目ね。私。
「アリス、ちょっといいかしら。」
応えは聞かない。
私は彼女をそのすぐ背面の本棚に弱々しい力だけど、半ば強引に押し当てる。
顔を正面から覗き込む。引きつってる表情も可愛らしい。そこに私の顔をすこし躊躇いながらもゆっくりと近づける。目を瞑る。

[newpage]

アリスの柔らかい唇と私のそれが触れ合う。お互いの体に触れる手に力がこもる。それでさえ何処と無く心地よい。

あの人間は暫く来ないのでしょう？
アリス、また明日、ここに来るといいわ。今日の続きをしましょう？

「ねえ小悪魔。この本を片付けて貰っていいかしら？」[newpage]

アリスは私の向かいに腰掛け、頬杖をつき、上の方を虚ろな目で眺める。一体何なのよ。
「で、何しに来たの？」
「さっき、魔理沙にあったわ。」
「応えになってない。」
「特に理由は無い。」
「昨日もそんなこと言ってたわね。本当のところ、どうなのよ。」
「貴方を見に来ただけ。」
「私は天井にはびりついてなんかないのだけれど。」
「...。」
本格的に訳が分からない。[newpage]

「昨日の夜、私がここにきた後、貴方すぐに寝ちゃったでしょう？」
無言で頷く。
「その後どうしたか覚えているかしら。」
首を左右に振る。
「知りたい？」
「...。ええ。」
咄嗟に周りを確認する。どうやら小悪魔は遠くの書架までいったようね。
「面と向かって言うのってやっぱり恥ずかしいから机に伏して貰ってもいいかしら。」
なによ、そんなに言いづらいことしたの？まあここで従わない理由も無いわ。
伏せる。[newpage]

ガタッと立ち上がるような音がした。それから、近付いてくるような足音が聞こえてくる。カツ、カツという音だけが頭の中に響くと同時にちょっとした恐怖心からか心臓の鼓動もはっきりと聞こえる。私はただ、拳に力を込めることしかできなくなってしまったみたいだ。[newpage]

「初めはね、その、ただ同じ魔法使いとして尊敬してただけなの。だって貴方凄いもの。」
黙って聞く。
「だけどね、見てるうちにね、あ、あなたの姿、白い肌とか髪とか、何もかもが愛おしくなってきて...」
「...。」
「それでね、貴方が魔理沙と仲が良さそうにしてるのを見た所為で嫉妬心が、余計に私を駆り立てて...。」
「別に仲良くしてた訳では無いわ。」
「で、でも！あなたが声を荒げてたりする相手って魔理沙以外にいないからそれだけ特別な人なのかなって。」
「盗難にあってるのだから当然よね。」
「でもさっき、ね、私にもそうしてくれたから、そ、その、すごく嬉しくて...。」
「...。」
「...もういい？」
「ええ。」
お互いの顔を見ないまま時間が過ぎる。実際はどうか分からないけどかなり長い間そのままじっとしてたと思う。[newpage]

アリスの柔らかい唇と私のそれが触れ合う。お互いの体に触れる手に力がこもる。それでさえ何処と無く心地よい。

あの人間は暫く来ないのでしょう？
アリス、また明日、ここに来るといいわ。今日の続きをしましょう？

閲覧数1487
総合点221

ブックマークに追加

イラストコミュニケーションサービス[pixiv(ピクシブ)]

pixivへようこそ

今日の続きをしましょう？

伊織

この作品の前後に投稿された作品