先月29日に米国連邦議会上下両院合同会議で行われた安倍晋三首相の演説は、植民地支配と従軍慰安婦についてどう語るかに関心が集まっていたが、この点に劣らず記者が注目したのは、日本の対外戦略に占める韓国の比重がうかがわれる部分だった。安倍首相は「アジア太平洋地域の平和と安全のため、米国のリバランスを支持する。徹頭徹尾支持するということを、ここに明言する」と前置きした上で「日本はオーストラリア、インドと、戦略的な関係を深めた。ASEAN(東南アジア諸国連合)の国々や韓国と、多面にわたる協力を深めていく」と語った。日本外交の優先順位において韓国が、2007年に安全保障協力に関する共同宣言に署名したオーストラリア、数年前から急速に接近しているインドはもちろん、東南アジア諸国よりも下ということを明らかにしたのだ。
安倍首相の今回の演説は、「太平洋国家」という首相の目標を再確認させるものだった。安倍首相は、オバマ大統領訪日に先立つ14年4月、欧米メディアに「日本の第二の開国」という記事を寄稿し「日本はもはや、自らを極東とは考えない。われわれは環太平洋地域の中心にある」と主張した。19世紀末の最初の開国を主導した福沢諭吉のように、安倍首相も、日本にとって特段役に立たない東アジアの国々とは距離を置く準備ができていることを明らかにしたのだ。
日本を「北東アジア」という枠組みの中で理解し、「韓中日」という表現に慣れ親しんできた韓国としては、安倍首相の立場は容易には理解できない。いやそれどころか、地理的・歴史的に最も近い韓国に、どうしてこうも冷たくできるのだろうか。しかしこうした疑問は、日本が「アジア国家」と「太平洋国家」という二重のアイデンティティーを持っているという事実を理解すれば、容易に解ける。