ロシア:「戦勝国」外交 抗日戦争で中露で足並み

毎日新聞 2015年05月08日 17時34分(最終更新 05月08日 18時19分)

 【モスクワ杉尾直哉、西岡省二】第二次世界大戦での対独戦勝利70周年を9日に祝うロシアで、中国の抗日戦争で旧ソ連軍が果たした役割を強調する議論が活発化している。ウクライナ問題を巡って欧米や日本から制裁を受けるロシアにとって、中国と歴史認識を一致させて結束を図ることで、西側の否定的なロシア観に対抗する狙いがありそうだ。

 モスクワでは5日、「ファシズムと日本の軍国主義への勝利でソ連と中国が果たした役割」というシンポジウムが開かれた。プーチン露大統領はこの会合に祝辞を贈り「我々両国の人民は、ナチズムと(日本の)軍国主義との戦いでもっとも痛ましい損失をこうむった。共に戦い、(第二次大戦の)勝利で決定的な貢献をした」と指摘。「この歴史を書き換えようとする企ては決して容認できない」と訴えた。

 「歴史の書き換え」についての具体的言及はなかったが、日本や欧米の首脳が9日の式典への参加を軒並み見送ったことを念頭に置いた可能性がある。

 シンポでは、ロシア極東研究所のチタレンコ所長が「第二次大戦は1939年のドイツによるポーランド侵攻で始まったのではなく、37年の日本軍による中国侵略(盧溝橋事件)で始まった」と発言した。

 6日には中露両国の国営メディア主催で、モスクワと北京をテレビ電話で結んだ研究者の討論会が開かれた。

 ロシア側はこの際、「31年の満州事変は実際には戦争だった」と指摘。その上で「39年のソ連国境での日ソ両軍の衝突(ノモンハン事件)でソ連軍が日本軍を撃退した。日本に『ソ連には勝てない』との教訓を与えた」などと述べた。これに対し、中国人研究者は「ソ連は抗日戦の苦しい時に中国を助けてくれた」「日本の指導者はいまだに過ちを認識していない」などと応じた。

 中国は「戦勝国」外交を今年の対外政策の柱に掲げている。反ファシズム戦争と抗日戦争を結びつけ、中国は米国や旧ソ連と並ぶ「戦勝国」であると強調することで、戦後国際秩序の破壊者ではないというイメージを国際社会に広めようというものだ。

 ただ、中国国営メディアなどが安倍晋三首相の歴史認識を批判する宣伝戦を展開する一方で、習近平国家主席は安倍首相との首脳会談に応じるなど、関係改善の意思も見せる。今後も公式の場では、日本を過度に刺激するような批判を控えるなど、ロシアとは一線を画す対応を取る可能性が高そうだ。

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