朝鮮時代最高の教育機関で、韓国儒学者たちの本山でもある「成均館」が、ソウル市鍾路区の成均館大学キャンパス内にある「ソウル文廟および成均館」(宝物第141号)で儒教体験プログラムを実施しようとしたが、思わぬ事情で困難に陥っている。文化財庁が成均館の建物の使用を許可していないためだ。朝鮮時代に建設され、孔子ら儒学者たちの位牌をまつり、儒生たちを教育する場だった「ソウル文廟および成均館」は1963年に文化財に指定され、利用するには文化財庁の審議を受けなければならない。
成均館側は先月、文化財庁に「2015年5月1日から11月30日まで『ソウル文廟および成均館』の中にある大成殿・明倫堂・東斎・西斎を使用したいので審議してほしい」と使用申請を提出した。仏教の寺が実施するテンプルステイ(宿坊)のように、一般の人々を対象に朝鮮時代の儒生たちが学んだ「成均館」の建物で1泊2日間寝食を共にし、儒教の礼節を身につける「成均館ステイ」を実施しようという計画だった。寝泊まりは儒生たちが寄宿舎として使用した「成均館」内の東斎と西斎ですることにし、合わせて32室に1室当たり電灯1つとコンセント2口を設置、部屋を床暖房にするなどの施設補修検討も要請した。
ところが、文化財庁傘下の文化財委員会建築文化財分科委員会(パク・キョンリプ委員長)はこのほど、出席委員9人の全員一致で成均館が提出した使用申請を不許可にする決定を下した。「事故や火災などで建物が損なわれる恐れがある」という理由だった。
成均館側はこうした懸念に対し「東斎と西斎の2室に消火器を1本ずつ設置し、夜間は午前0時まで安全管理要員を置いて警備を行う」と言ったが、イ・スゴン委員(ソウル市立大学土木工学科教授)は「2008年の南大門放火事件以降、文化財の火災に対する懸念が高まっている状況で、1泊2日間にわたり寝食することを許可するわけにはいかないという方向で委員たちの意見がまとまった」と話している。