戦後70年:戦争の悲劇を人類遺産に 普遍性説得力が課題

毎日新聞 2015年05月08日 22時44分(最終更新 05月08日 22時50分)

 一方、今年中国からは南京大虐殺と従軍慰安婦関連資料が申請されている。戦争関連の資料は対外関係や時々の世界情勢でデリケートな問題をはらむ。炭坑絵画の登録申請に携わった有馬学・福岡市博物館長(日本近代史)は「回天でも知覧でも、その地域で保存し記憶することは意味があるが、なぜ世界で守らなければならないのか、説得力のある説明をする必要がある。解釈が分かれる事柄ほど普遍的に説明するのは難しい」と指摘する。【高橋咲子、津島史人、鈴木健太郎】

 【ことば】世界記憶遺産

 世界の重要な記録の保護と振興を目的にユネスコが1992年に事業を始めた。政府申請に限る世界自然・文化遺産と異なり、自治体や個人でも申請できる。同時期の推薦は原則として1カ国2件以内。日本からは炭坑画などの「山本作兵衛コレクション」▽「慶長遣欧使節関係資料」▽藤原道長の「御堂関白記」の3件が登録されている。京都・東寺に伝えられた国宝「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」と、シベリア抑留者の引き揚げ記録「舞鶴への生還」の2件が国内候補になっており、今年審査される。

 ◇「被爆地と協力」国立公園化で米が返書

 米国が第二次世界大戦中に原爆開発を進めた「マンハッタン計画」の関連施設を国立公園にする計画を巡り、広島市は8日、被爆の現実を踏まえた整備を求めた同市の要請文に対し、米内務省から返書が届いたと発表した。返書では、公園に掲げる解説内容について「日本や広島、長崎両市と協力して取り組みたい」としている。

 昨年12月に広島市がキャロライン・ケネディ駐日米大使宛てに送った要請文に対するもので、ジョナサン・ジャビス米内務省国立公園局長名で今月7日に同市に届いた。原爆開発関連施設の国立公園化について「世界を変えた重要な出来事について理解を深める好機だ」とした上で、公園整備にあたり「広島市長や市民と協働する機会を楽しみにしている」と記している。

 計画を巡っては、渡米した松井一実・広島市長と田上富久・長崎市長が今月1日、公園化に取り組む米民間団体の理事長と面会し、原爆投下を正当化しないよう求めている。【加藤小夜】

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