英総選挙で圧勝 保守党の政権に
5月8日 23時48分
7日、イギリスで5年に1度の総選挙が行われました。
与党・保守党は、事前の予測を大きく上回り、単独で議会下院の過半数の議席を獲得しました。
予想を覆して、なぜ、保守党は圧勝したのか。キャメロン首相の新政権にとって今後の課題は何か。
ロンドン支局の松木支局長が解説します。
保守党が単独過半数
イギリスの総選挙は、議会下院の650議席をめぐって投票が行われました。
それぞれの小選挙区で最も得票が多かった候補1人が議席を獲得する「単純小選挙区制」です。
保守党は過半数を上回る議席を獲得し、単独で政権を担うことが確実となりました。
これに対し、5年ぶりの政権交代を目指した最大野党の労働党は、議席を大幅に減らしました。
選挙前の予想を覆す結果に、保守系の新聞は「保守党に大きく振れた」と伝えました。
一方、左派系の新聞は「またあと5年やるのか」と、苦々しげなトーンでキャメロン首相の続投が確実になったと報じています。
そのほかの政党では、保守党と連立を組んできた自由民主党が惨敗。
EU=ヨーロッパ連合からの離脱を掲げて注目を集めたイギリス独立党も1議席にとどまりました。
こうしたなか、大きく躍進した少数政党がスコットランドの独立を目指すスコットランド民族党でした。
候補者を擁立した59の選挙区のうち56で勝利。
解散時の6から56へと大きく議席を伸ばし、議会下院の第3党になりました。
保守党の勝因は?
どの政党も単独では過半数の議席が取れない「ハングパーラメント(宙づり国会)」となり、伝統の2大政党制がいよいよ終わりを告げる象徴的な選挙となるのでは。こうした事前の予想を覆し、なぜ、保守党が圧勝する結果になったのか?
キャメロン首相は選挙戦終盤、「経済は好調で、政権はいい仕事をしている」と有権者に繰り返し訴え、政権の経済面での実績を訴えました。
実際、イギリスは先進国の中でも高い経済成長を続けていて、政権与党としての実績、安定感が評価されたことがまずは大きかったとみられています。
また、保守党は、労働党が政権交代を実現させるために、国の分裂を招きかねないスコットランド民族党と協力するおそれがあると有権者の危機感をあおる作戦に出ました。
この作戦が功を奏し、多くの有権者が保守党に票を投じたという見方も出ています。
新政権の課題1 EUとの関係
総選挙の結果、キャメロン首相が再び政権を担う見通しとなりましたが、2期目の課題は少なくありません。
日本を含めて国際社会に与える影響が大きいのは、新政権がイギリスとEUとの関係を見直すことになるのかどうかです。
キャメロン首相は、2017年末までにEUからの離脱の賛否を問う国民投票を行う方針を打ち出しています。
イギリスのEUへの資金拠出額は加盟国の中で4番目に多く、もし離脱となればEUへのダメージは極めて大きいと言えます。
また、イギリスに進出する日系企業は1000社を超え、イギリスをEUへの窓口と位置づけている企業も少なくありません。
仮にEUの統一された市場からイギリスが切り離されることになれば、拠点を他国に移すことを検討する企業も出てくるとみられています。
実はキャメロン首相も、イギリスがEUの自由な貿易の恩恵に浴していることは、よく分かっています。
ただ、イギリスでは、EU各国からの移民の数が増えた結果、国内の雇用が奪われたり、医療や学校などの公共サービスが圧迫されたりしたという批判の声が国民の一部から聞かれます。
こうした批判もあり、キャメロン首相は、移民の制限などについてEUとの交渉に臨む考えです。
しかし、交渉で国民を納得させられるような明確な成果が挙げられなければ、反EUの世論が高まり、国民投票でEUからの離脱という結果を招く可能性もあります。
新政権の課題2 スコットランドとの関係
キャメロン首相の新政権にとって、もう1つの大きな課題は、独立の機運が高まる北部スコットランドとどう向き合うかです。
議会第3党へと躍進したスコットランド民族党は、キャメロン首相の財政緊縮策に鋭く対決する姿勢を示し、一層の自治権拡大を求めています。
選挙の結果を受けて、スタージョン党首は「われわれの仕事はスコットランドの住民の権利を守ることだ」と述べ、再び独立の賛否を問う住民投票の実施を目指すものとみられています。
独立の機運が高まることが予想されるスコットランドとの関係をどうするのか、新政権は慎重に検討していくものとみられます。
“強い政権”になるのか
単独過半数の議席を得て再任された場合、キャメロン首相は、これまでより自分のカラーを打ち出しやすくなります。
首相を務めるのは2期までと表明しているキャメロン氏が、国の内外の課題にどう向き合っていくのか。強く安定した政権を維持することができるのか。
その手腕が注目されます。