鬼灯様が駒王協定時点でキレて乗り込んで来ました。   作:すじゃに
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地獄の使者が出張してきた。その2


なんて言ったら良いんだろう。
俺は今ありえない物を見ている。
何度も目を擦ったり瞬いたりして見直しても信じられない状況だ。



「えっ~と。き、君はどうして此処に座るのかな?」
「……良い匂いだからです」



小猫ちゃんが……小猫ちゃんが萌黄色の着物来た人の膝上に思いっきり乗ってるんだ。
毒舌で性的な事を嫌悪して拒絶する()()小猫ちゃんが!
というか萌黄色の着物の人も非常に困惑している。
そりゃそうだよな、初めて対面した女子高生に膝に乗られたら動揺するよな。

「ええっと……タオ?桃?」
「ああ、俺の名前は桃太郎(ももたろう)です。白澤(はくたく)様と鬼灯(ほおずき)さんで呼び方が違うから、混乱されたんでしょう?」
「それじゃ、あの絵本とかで有名な本当の桃太郎!?」
「御恥ずかしながら。一応本人です……今は鬼退治じゃなくて、
 天界の桃源郷(とうげんきょう)で仙桃の世話をしながら、
 白澤様に師事を仰いで薬剤師の修業中です」
(タオ)タロー君ってのは僕が付けた渾名(あだな)だよ。
 しかし、猫だからかなー?その子。
 桃タロー君は破邪の化身であると同時に桃の化身でもあるからね。
 猫は基本マタタビ科の物に酔うんだけど、バラ科の植物も好きなんだよ。香りとか。
 ただ、バラ科植物の茎や熟した果実は良いんだけど、
 一部の葉や種部分に猫にとって毒が入っているから極力食べさせない方が良い」
「えっ、この子。猫なんですか……って言うか猫ってそうなんですか?白澤様」
「そうだよ。だから彼女が桃タロー君の匂いを好んで座るのも頷けるんだよねぇ。
 でも匂いもだけど、桃タロー君は神獣を手懐ける事が出来る位、
 動物から好かれるっていう性格と性質も持っているから。
 そっちの方が強いかも。三神獣もその口だったりするよ」
「あ、御伴の犬・サル・雉でしたっけ?」
「そうそう。シロちゃんに柿助君にルリオ君」
「あれ?俺てっきりアイツ達は御婆さんのキビ団子で懐いてくれてたと思ってたんですが」
「キビ団子だけだったら死後600年以上も経過しているのにずっと一緒になんて居ないよ?
 桃タロー君だからこそあの三神獣は傍に居たんだ」
「そうだったんですか……そういえばルリオとかにも前にそう言って貰った事もあったし、
 改めて嬉しいなぁ。今度皆に良い飯奢ってやらないと」
「あの三神獣も喜ぶと思うよ?所で猫ちゃん、僕の膝はどうかい?
 僕も桃源郷住まいだから桃の香りがすると思うんだけど」
「……貴方はその匂いが消える位メス臭いから嫌です」

改めて小猫ちゃん名前の通り猫なの?というか超有名人が目の前に?
って一気に情報が入って混乱気味な俺だけど、
小猫ちゃんは白澤様の膝に誘われた瞬間ずばっと何時もの毒舌吐いた。
メス臭いってなんだ。
其処はいつも通りの小猫ちゃんだよな……でもなんか凄い光景だ。
若干狼狽している桃太郎さんに引っ付いてゴロゴロ……。
本当に猫みたいな音出してる小猫ちゃん。
なんか桃太郎さんも諦めて小猫ちゃんの頭をゆっくりと撫で始めた。
くそう、羨ましいな!なんだこの光景!!

「バラ科の種や若い果実には基本アミグダリンが含まれていて、
 それが加水分解するとシアン化水素。判りやすく言えば青酸に変わります。
 ハッキリ言えば猫どころか人間にも毒ですね。
 だからアーモンドや杏や梅等を人間は食用にする為に加工や熟成をさせるのですよ。
 熟成等の処理によって成分が分解されますから」

その言葉で俺は固まる。
バリトンボイスが隣で響くとマジ怖いんですが鬼灯様。なんで俺の隣なんですか。
反対側の白澤様をこれでもかって睨んでいるんですか。
そもそもグレモリー邸に入る前はボロボロな姿だったのに白澤様もう治ってるんだよな。
それも服ごと。斑に朱かったのが新品みたいな純白に戻っている。
あの回復力凄くないか?フェニックスより速い回復速度じゃないか。
そう思ってたら鬼灯様の目線が桃太郎さんの方に移動した瞬間。


「リアル猫耳……むっちゃモフモフしたい」


すっげぇ一言が聞こえた!ボソッと小さい声だったけど、俺には思いっきり聞こえた!
って本当に小猫ちゃん猫耳出してる!なんだアレ可愛い!

「あらあら……塔城さんが猫耳を出すなんて随分寛いでますわね」
「私も久しぶりに平常時の猫耳を見たわ……。
 こんな風に安心している小猫を見るのは珍しいわね」
「ぶぶぶ、部長、朱乃さん。アレって」
「あぁ、そういえばイッセーには言ってなかったかしら。小猫は元々は猫又の上位存在よ」

そうだったのか!小猫ちゃん人間じゃなかったのか。
凄く驚いたけど堕天使と人間のハーフである朱乃さんが悪魔になっている分、
そういうのも当たり前なんだろう。
猫耳カワイイから俺としては全く構わないし。

「ふにゃぁ……」

うおぉぉ!桃太郎さんに猫耳の根本を掻いて貰った小猫ちゃんがうっとりとした声出した!
なんだあれ鼻血出そうな色っぽい声だったんだけど!!
それに対して桃太郎さんすげぇ。
普通に猫扱ってる感じ……ていうかお母さんみたいな顔してる。
つうか縁側で日向ぼっこしながら猫を膝に抱えている御婆さん。
男の人にお母さんや御婆さんって表現は可笑しいかもしれないが。
600年以上天界に居るって白澤様が言ってたから、
桃太郎さんから見れば俺達みたいなのって若過ぎて子供みたいな感覚なのかな。
だから平気なのかもしれない。

「いやぁ、可愛いですねぇ。この子」
「可愛いでしょう?小猫は私にとって大切な妹なの」

とか普通にニコニコと部長に話しかけてるよ。
小猫ちゃんはもう完全に桃太郎さんに懐いている感じだ。
そこでやっとサーゼクス様がやってきた。隣にはグレイフィアさんも着いてきている。

「今日はこの度、我々の願いを聞き入れて下さりありがとうございました。鬼灯様。白澤様」
「いやぁ、綺麗な人を救うって事なら喜んで手伝うよ僕は?
 後研究用に幾つかの此方の土地特有の薬草や新しいドラゴン・アップルの種子も貰えたし」
「……え。お兄様。グレイフィア。何の話なの?」
「白澤様にお願いして、バアル家のミスラ様を治療して頂いたのです」
「小母様を!?」
「そうだよ。あの『眠りの病』は魂魄が肉体の深淵に落ちていた状態だったから。
 招魂術の応用で浮上させたんだ。暫くは回復したてだと身体が衰えているから、
 薬膳粥のレシピと材料も上げてたんだ、勿論料金は良心価格」
「ありがとうございます!これで従兄のサイラオーグも喜びます!」
「んふふふ、美人に言われるとホントやったかいがあったね♪」
「直後にその奥様を息子さんの目の前でこの馬鹿が軟派しなければ少しは見直したのですが」
「なんだよ。そこで即刻殴ったお前に言われたくないよ」
「それ以前に貴方女性の魔王様すら口説いていたでしょう。反省の色が欠片もありませんね」
「レヴィアタンちゃん可愛かったからナンパしないのは僕の信念に反するよ!」
「これだから淫獣は……去勢してやろうか」

俺の前でそのドス血紫黒い色っぽいオーラ放出しないで下さい鬼灯様。
意識が飛ぶ。本気で飛ぶ。今の時点でなんか走馬灯が流れてる。
部長の生おっぱいとか秘蔵DVDのおっぱいとか……おっぱいな思い出しか流れないのか俺!?
あと桃太郎さんさり気なく席を数個離れて距離置いている!いつの間に!?
それも小猫ちゃん抱えたままって凄い事じゃないか?

「申し訳ありません……宜しかったらお怒りを鎮めてくださいませんでしょうか」

グレイフィアさんグッジョブ!
鬼灯様が一気に怒り沈めてじっとグレイフィアさんに振り向いて眺めている。
……グレイフィアさんが好みなのかな?鬼灯様。

「……サーゼクス様」
「なんでしょうか鬼灯殿」
「此方EU地獄では前サタン王と同じ趣味を持たないといけないのですか?魔王制度は。
 いえこの趣味に対して文句は付けるつもりはありませんが。私も嫌いではありませんし」
「ごふっ」

あぁ!サーゼクス様が吐血した!?
それよりも嫌いじゃないのか。俺の鬼灯様への見方がちょっと変わったかもしれない。
ちゃんと男性なんだって思った。確かにメイド服良いよな。

「あ、因みに近年の絶対領域という物より因習にのっとった長い丈のタイプが好きです。
 そういう意味ではグレイフィアさんが身に着けているメイド服は良いですね。
 ただ上部のデザインはそこまで好みではありませんが」

くるって俺の方向いて一言放った!だからなんでそんなに俺の心読むんですか鬼灯様!
今度は俺の表情見て無かったよな!?

「ほ、鬼灯殿……この事に関してはどうかご容赦を……色々事情がありますので」
「そうですか、普通に見ていて趣味だと思ってしまいましたが。ご理由があるのですね」
「………………」

グレイフィアさんまで青褪めてるよ。……というか趣味なのか?趣味なんですか!?

「まぁ冗談は置いておきましょう。私の方も折角招待して頂きましたし、
 余り無礼な事はしたくない」

今までのは無礼じゃなかったんですか鬼灯様。
……あ、いやそういえば今の質問とか以外は白澤様に対しての発言だから失礼じゃないか。

「そ、そういえば鬼灯様はヴァーリの件以外では何をされたんですか?」

話題を変えようと俺が手を上げて発言する。

「此方……鬼灯殿はEU地獄界と仰られている冥界と、
 日本地獄界との交流を再開させる為の下準備だよイッセー君。
 私としては滞りなく済みましたので、本当に良かったと思います」
「えぇ、此方もそれは穏便に済んで良かったと思っています。
 今後元日の本の民であった転生悪魔の方々のルールに、
 『帰省時は日本地獄を経由する事』と明記していましたからね」
「はい。今後も何卒よろしくお願いします。鬼灯殿」

そう言ってサーゼクス様が会釈する。
日本地獄の話や此方冥界の話とか、適度な会話を挟みつつの穏やかな食事会が始まった。
俺は小猫ちゃんレベルで食べていく鬼灯様に驚いていたけど。
そしてヘベレケになった白澤様をここぞとばかりに鬼灯様はシバキ倒してた。
どれだけ仲悪いんだあの人達。桃太郎さんが

「何時もの事ですので、落ち着くまで触れない方が良いですよ。
 白澤様の介抱は俺がしますし」

ってさらっと流していたのが余計に怖かったぞ。





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「……さて、夕食も御馳走になりまして随分もてなして下さり有難う御座いました。
 私はそろそろお暇しようかと」

そう言って、鬼灯様が立ち上がる。

「え、もうご出立されるのですか?鬼灯殿」
「えぇ、此処から日本地獄は地味に遠いのですよ。
 だから移動だけでも結構かかります。その間に仕事が溜まるとまた支障が出ますので……」

本当に鬼灯様って仕事人間……違う鬼か。
真面目な鬼なんだなぁ。俺の鬼のイメージがガラガラと音を立てて崩れていく。

「その想像はまぁ基本人間からしたら当たり前ですよ。
 疫鬼等、現世に出ている鬼の方がイメージとしては大きいですからね。
 私達地獄にて活動している獄卒は亡者を呵責する為の制度に従事する、
 真面目な鬼ばかりです」

もう俺この心読まれるのには慣れた。うん。慣れた方が精神的に良い。

「お待ち下さい。鬼灯殿。我々としてもその部分には少し考えがありまして」
「なんでしょうかサーゼクス様?」
「良かったら、此方グレモリー領土のこの邸と。地獄の入り口にゲートを繋げませんか?
 そうすれば移動が非常に簡単になるかと。勿論鬼灯殿を筆頭とした重要人物等、
 認証された者以外通れない様にすれば良いかと思っていますが」
「………………少々お待ち下さい。少し電話をさせて頂きます」

そう言われて、鬼灯様が頬に手を当てると、
徐に袖の中から携帯を取り出し……携帯持ってるのか!!
ピピピピっと手馴れた感じで電話を掛けて。
ヒソヒソと此方に見えない様にして何事かを交わしている。
一瞬眉を顰めたけれども。そのままパタンと携帯の蓋を閉じた。

「正式な通路としては十王の認証が必要になるのですが。
 私の帰宅には使っても良いと許可が下りました。
 ついでに働き過ぎだから帰還に使う予定だった日数此方で休めとも……チッ。
 この調子であの閻魔(アホ)大王サボるつもりだな」

本当に鬼灯様は補佐官なのか!?
俺には全然そう見えない。王様にそんな発言して良いのか?
それ以上にこの人仕事中毒(ワーカーホリック)じゃないのか?
仕事が出来ないから舌打ちって俺には理解出来ない。

「そういう事で……宜しかったら滞在中此方の内情等を詳しく教えて頂けますでしょうか」
「それは喜んでだよ!鬼灯殿。私も全力で手伝わせて頂きた……」

その最中、バターン!!と入口の扉が開いた。

「それなら俺に修業を付けてくれないか!!!!」
『ヴァーリ何を言っているんだ!?正気に戻れ!!』
「止めろヴァーリィィイィィ!!俺にこれ以上胃に穴開けさせるなぁあ!!!」

満面の笑顔なヴァーリと……その腰に必死にしがみ付いてるアザゼル先生……おい。

「ほう……私に修業を。ですか」

あ、コレ獲物見つけたって顔だ。完全にドSの顔だ。

「良いでしょう。その性根、私が直々に叩き直して差し上げましょう」
「俺の方こそ。アンタに一度は攻撃を当てて見せる!」

ドヤ顔で言う事じゃねぇよヴァーリ!お前それ言って良いセリフじゃねぇよ!!
とか考えてたら。なんか俺の襟首も掴まれ……は?

「ついでです。イッセーさん。貴方の性根も叩き直しましょう。
 ……その宿っているドラゴン含めてね」
『「ひぃ!?」』

俺とドライグが同調して悲鳴を上げた!低い!その更に低い声止めて下さい!!



それからが、俺とドライグにとって地獄の始まりだった……。


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