核兵器:即時発射できる高度警戒の解除 元米軍高官も主張
毎日新聞 2015年05月07日 11時47分(最終更新 05月07日 12時47分)
【ニューヨーク草野和彦】世界の核兵器数削減が進まない中、暫定的な措置として、即時に発射できる高度警戒態勢の解除を求める声が非核保有国から高まっている。米国とロシアで高度警戒態勢にある核兵器は計約1800発。誤発射による壊滅的被害を防ぐ意味もあり、各国の元軍高官らも「実際的な軍縮」として支持している。カートライト元米統合参謀副議長もその一人で、10年以内の全核兵器の警戒態勢解除を主張している。
米露は冷戦期、相手が核兵器を発射したという早期警戒センサーの警報があれば、それが着弾し、報復攻撃ができなくなる前に核兵器を発射できる態勢を導入した。相手に核の先制攻撃を思いとどまらせる抑止効果を狙ったものだ。
軍制服組のナンバー2だったカートライト氏は現在、核兵器廃絶を目指す国際運動「グローバル・ゼロ」に参加。核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせ先月30日に国連本部で開催されたイベントで講演した。
カートライト氏は、「抑止とは、(核先制攻撃を受けたとしても)報復攻撃が可能な手段を確保しておくことだ」と述べ、核兵器の高度警戒態勢自体には「抑止効果はない」と主張した。また、米露が互いに高度警戒態勢をとっている状態では「信頼関係も構築できない」と語った。
また、警報を受け、米大統領が報復攻撃のために核兵器を発射するかどうかの判断を下すまでの時間は数分しかないとされる。警報装置が誤作動する可能性もあるが、確認する間もなく、決断を迫られることになる。
さらにカートライト氏は、高度警戒態勢の核兵器は「21世紀になって顕著になった脅威に対してもろい」と言う。貯蔵施設から出した核弾頭を弾道ミサイルなど運搬手段に装着する過程でテロ組織に狙われる可能性があり、老朽化が進んだ核戦力システムはサイバー攻撃への対処が十分ではないからだ。
こうした点を踏まえ、カートライト氏が座長となってまとめた「グローバル・ゼロ」の報告書では、10年以内に4段階で高度警戒態勢を解除していくことを提案した。
非核保有国の「警戒態勢解除グループ」(6カ国)を代表し、チリは今月1日、再検討会議の委員会で「核保有国は核兵器の警戒態勢を解除し、爆発のリスクを最小限にすべきだ」と訴えた。