衆院憲法審査会:「緊急事態、先行議論を」自民が提案

毎日新聞 2015年05月07日 22時06分(最終更新 05月07日 23時44分)

昨年の衆院選後初めて憲法改正に関して実質的な議論を行った衆院憲法審査会=国会で2015年5月7日午前9時35分、小出洋平撮影
昨年の衆院選後初めて憲法改正に関して実質的な議論を行った衆院憲法審査会=国会で2015年5月7日午前9時35分、小出洋平撮影

 自民党は9条改正を当面棚上げする姿勢だ。来年の参院選後を目標とする最初のタイミングで賛同が得やすい項目の改正を実現し、世論の変化を見極め、ハードルが高い9条に着手する戦術を描くためだ。自民党の船田元氏は7日の憲法審査会で「国防軍」創設を盛り込んだ自民党の憲法改正草案(2012年)について、「合意のため大いなる妥協を続け、結果として元の姿ではなくなる」と柔軟姿勢を強調した。

 ただ、野党は早くも「お試し改憲」との批判を強めている。民主党の武正公一氏は安倍晋三首相の過去の発言を挙げ、「連合国軍総司令部(GHQ)による『押し付け憲法』だから改正するという主張の是非を確認する必要がある」と語り、改憲を急ぐ自民党を強くけん制した。

 首相は13年参院選で、憲法改正の発議要件を緩和する96条改正を主張したが、「裏口入学」との批判を受けて断念した。緊急事態条項など3項目を優先する今回の戦術にも、衆院で絶対安定多数を誇る自民党には「やらないといけないところからやるべきだ」(山田賢司氏)との疑問の声があり、先行論議の行方には不透明さが残る。

 7日の憲法審では、共産党を除く各党が緊急事態条項について言及し、検討の必要性では足並みがそろった。ただ、自民党草案には、緊急時の私権の一部制限や行政権限の強化など、基本的人権に関わる項目が盛り込まれている。民主、公明両党が想定するのは議員任期の延長など限られた内容で、具体論に入れば、各党の国家観の違いが浮き彫りになるのは確実だ。

 憲法審の終了後、船田氏は記者団に「今後2年の間に発議がなされ、国民投票までつながればありがたい」と発言。自民党の描くスケジュールに沿って2年以内の改憲を目指す考えを強調した。【佐藤慶】

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