2015年5月8日14時01分
本局の舞台である松江歴史館。普段は来場者がお茶や庭を楽しむ大広間が対局室となった。
この対局のために、びょうぶや掛け軸なども用意された。行方八段の後方に飾られたびょうぶは、江戸後期から明治初期にかけて活躍した画家、田能村直入(たのむら・ちょくにゅう)の作品。両対局者の横のびょうぶには、華やかな紅白のボタンが描かれている。
掛け軸にしたためられているのは、茶人として知られる江戸時代の松江藩主・松平治郷の弟、雪川(せっそん)の書「屠龍(とりゅう)」。現実にはいない竜を倒すことを指し、転じて「ありえないほどの技」といった意味があるという。検分の際、行方八段は視線の先にあるこの書の意味を歴史館の職員に尋ねていた。
これらはいずれも市民の所蔵品。伝統ある戦いの場にふさわしい地域の宝が顔をそろえている。(村瀬信也)
■対局再開
【午後1時30分】対局が再開した。手番の羽生名人はほどなくして着座し、考えている。6分ほどして行方八段が入室した。(村瀬信也)
■昼食休憩
【午後0時30分】羽生名人が68手目を考慮中に昼食休憩に入った。午後1時半に再開する。
2日目の昼食は、羽生名人が明治20年創業「浪花寿司」のにぎりずし。エビやキングサーモンのほか、テナシイカ(ヤリイカ)、ウニ、アジ、タイ、カンパチと地物のネタが並ぶ。タイのアラ汁も添えられている。
一方、行方挑戦者は明治21年創業「皆美館」の鯛(たい)めし。ご飯の上にタイのそぼろと裏ごしした卵の黄身、白身、大根おろし、海苔をのせ、ダシをかけて食べるお茶漬けだ。名人戦一行が松江入りした6日の昼、江戸時代の松江藩主・松平治郷(はるさと、不昧公=ふまいこう)が好んだ名物として出されたのがこの鯛めしだった。そのときは3杯おかわりした挑戦者。歴史館の職員は「よほどお気に召したんですね」。(深松真司)
■元サッカー日本代表の小村さん来場
【午前11時15分】午前10時に始まった大盤解説会に、元サッカー日本代表の小村徳男さんがゲスト出演。小村さんは松江市出身で、この日朝の封じ手開封の場面も盤側で見学していた。
解説会でマイクを握った小村さんは30分ほど、菅井竜也六段と「将棋とサッカー」についてトークを繰り広げた。
菅井「サッカーって、豪快なシュートというのは素人が見てもすごいなあと思うけど、将棋で豪快な手と言われてもよく分かりませんよね」
小村「将棋には王手飛車があるじゃないですか」
菅井「いやあ、名人戦の舞台ではなかなか出ないと思いますよ」
小村「第1局に続いて対局室に入らせていただいたんですが、羽生名人の寝癖をチェックしました。第1局はあったんですが、今日はないんですよね。きれいに整えられていました」
菅井「あれって、以前は『センサーなんじゃないか』と言われていました。羽生名人は相手がいい手を指して不利の局面になると喜んで、逆に有利な局面のときは困った表情のように見えるらしいです」
モニターに映る羽生名人はうつむき気味。困っているようにも見えるが、果たして形勢はどうだろうか。
大盤解説会場は大盛況で、当日券はすでに売り切れている。入れなかったファン15人ほどが会場外に設けられたモニターで盤面を見つめている。(深松真司)
■立会人に聞く
【午前9時30分】封じ手の▲5八金と次の△2六角成が指された局面で、立会人の井上慶太九段に見解を聞いた。
封じ手1手前の△4七歩について、井上九段は「相手の出方によって手を決めようという手。羽生さん一流の手渡しでしょうか」。そして「▲5八金は、直接攻めてもうまくいかないとみて、曲線的な流れにしようという手。しばらくはボンヤリとした戦いが続きそう」と分析した。
両対局者の様子については「羽生さんはまだ持ち時間も多いせいか、余裕があるように見えます。行方八段はいつも通り、一手一手気合を込めて指してますね」。第2局で初勝利を挙げた行方八段。充実して本局に臨めているようだ。
午前10時になり、両者にコーヒーが運ばれた。おいしそうにすすっている。(村瀬信也)
■封じ手は▲5八金、2日目始まる
【午前9時】羽生善治名人(44)に行方尚史八段(41)が挑戦している第73期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)第3局が松江市の松江歴史館で再開され、2日目に入った。ここまで両者1勝1敗のタイ。
1日目の指し手が並べ直され、立会人の井上慶太九段が封じ手を開封した。前日夕に行方挑戦者が封じた55手目は▲5八金。昨日の段階で本命視されていた▲3五歩ではなかった。解説の久保利明九段は「私も▲3五歩を予想していました。▲5八金は守りの金が自分の玉から離れていく手なので、ちょっとやりづらい手と思っていました。後手の角をいじめる狙いです。以下、予想される手順は△2六角成▲4七金△5九馬ですね。一直線の攻め合いという感じではなく、長い中盤戦が続きそうなイメージです」。
持ち時間は各9時間で、1日目の消費時間は行方挑戦者が4時間46分、羽生名人が3時間15分。本日夜までに終局する見込み。(佐藤圭司)
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