職員の残業時間に歯止めをかけるため、厚生労働省は10月から職員を午後10時に退庁させるルールを導入する。手始めに一部の部署では3月から試験的に先行実施を始めた。
同省は「ワークライフバランス」を掲げ、民間の長時間労働を是正する立場だが、実は官庁の中で最も残業時間が長いというジレンマをかかえる。職員からは「意識が変わった」「現実的に難しい」とさまざまな声が上がるが、午後10時完全退庁を実現することは可能なのか。
「休むのも仕事です。今度こそ本気です」
同省の長時間労働削減推進チームが名付けた「働き方・休み方改革推進戦略」のキャッチフレーズだ。
同省では週2回、午後8時での定時退庁日、月2回は同時刻での消灯日を設けるなどしてきた。だが、実効性には乏しく、今回は塩崎恭久厚労相の肝いりで“時短”の取り組みを10月からスタートさせる。
取り組みでは、職員は原則毎日午後8時までには退庁、やむを得ない場合でも午後10時までには必ず退庁するというもの。仕事が終わらない場合は翌朝、早めの登庁で対応したり、どうしても午後10時以降も残る必要がある職員は、次の登庁まで10時間の間隔を置かせるという。「休み方改革」として年次休暇は月1日以上、夏季休暇も連続1週間以上とることなども盛り込んだ。
さらに「本気度」がうかがえるのは、取り組みを人事評価にも加味する点だ。課室長に対し、毎月ごとに課室員の平均退庁時間が午後8時を超えた場合、改善計画書の提出を義務付けたほか、職員ごとの達成状況は「人事評価に反映させる」と明記した。
徹底した方針の背景には、同省が残業時間の多さで「ワースト」の常連であることも挙げられる。
霞が関で働く国家公務員の労働組合で作る「霞が関国家公務員労働組合共闘会議」がまとめた平成25年の残業実態の調査結果だ。24年は原発事故対応などでトップの座を経済産業省に譲ったものの、17〜23年は旧厚生省と旧労働省の2労組が7年連続で1位、2位を独占。25年は旧厚生省が返り咲いた形だ。
なぜ同省で残業時間が長いのか。人事課は「国会で対決型の法案を抱えることが多いため」と分析する。年金や医療、介護など社会保障関連法案は与野党の意見が対立しがち。今国会では過去に2度、廃案となり“3度目の正直”を狙う「労働者派遣法改正案」など計9本の法案が提出されているが、「分野も幅広く審議に時間がかかる重いものばかり」(官房総務課)というのが長時間労働の一因となっているようだ。
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