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» 2015年05月08日 00時00分 UPDATE

午後10時完全退庁:「休むのは仕事。今度こそ本気です」――厚労省、霞が関で“ワースト残業省”のジレンマ脱却なるか (1/2)

厚生労働省は10月から職員を午後10時に退庁させるルールを導入する。職員からは「意識が変わった」「現実的に難しい」などの声が上がるが、はたして午後10時完全退庁を実現することは可能なのか。

[産経新聞]
産経新聞

 職員の残業時間に歯止めをかけるため、厚生労働省は10月から職員を午後10時に退庁させるルールを導入する。手始めに一部の部署では3月から試験的に先行実施を始めた。

 同省は「ワークライフバランス」を掲げ、民間の長時間労働を是正する立場だが、実は官庁の中で最も残業時間が長いというジレンマをかかえる。職員からは「意識が変わった」「現実的に難しい」とさまざまな声が上がるが、午後10時完全退庁を実現することは可能なのか。

全職員の人事評価にも反映

 「休むのも仕事です。今度こそ本気です」

 同省の長時間労働削減推進チームが名付けた「働き方・休み方改革推進戦略」のキャッチフレーズだ。

 同省では週2回、午後8時での定時退庁日、月2回は同時刻での消灯日を設けるなどしてきた。だが、実効性には乏しく、今回は塩崎恭久厚労相の肝いりで“時短”の取り組みを10月からスタートさせる。

ks_kasumigaseki.jpg 厚生労働省が入る中央合同庁舎第5号館。「強制退庁」が予定される時刻になっても半数以上の部屋の明かりはついたままだ=4月24日午後10時、東京・霞が関

 取り組みでは、職員は原則毎日午後8時までには退庁、やむを得ない場合でも午後10時までには必ず退庁するというもの。仕事が終わらない場合は翌朝、早めの登庁で対応したり、どうしても午後10時以降も残る必要がある職員は、次の登庁まで10時間の間隔を置かせるという。「休み方改革」として年次休暇は月1日以上、夏季休暇も連続1週間以上とることなども盛り込んだ。

 さらに「本気度」がうかがえるのは、取り組みを人事評価にも加味する点だ。課室長に対し、毎月ごとに課室員の平均退庁時間が午後8時を超えた場合、改善計画書の提出を義務付けたほか、職員ごとの達成状況は「人事評価に反映させる」と明記した。

 徹底した方針の背景には、同省が残業時間の多さで「ワースト」の常連であることも挙げられる。

長い残業は「国会で対決型の法案を抱えるため」

  1. 厚生労働省(旧厚生省)55.5時間
  2. 国土交通省53時間
  3. 経済産業省50.1時間
  4. 特許庁43.7時間
  5. 厚生労働省(旧労働省)42.5時間

 霞が関で働く国家公務員の労働組合で作る「霞が関国家公務員労働組合共闘会議」がまとめた平成25年の残業実態の調査結果だ。24年は原発事故対応などでトップの座を経済産業省に譲ったものの、17〜23年は旧厚生省と旧労働省の2労組が7年連続で1位、2位を独占。25年は旧厚生省が返り咲いた形だ。

 なぜ同省で残業時間が長いのか。人事課は「国会で対決型の法案を抱えることが多いため」と分析する。年金や医療、介護など社会保障関連法案は与野党の意見が対立しがち。今国会では過去に2度、廃案となり“3度目の正直”を狙う「労働者派遣法改正案」など計9本の法案が提出されているが、「分野も幅広く審議に時間がかかる重いものばかり」(官房総務課)というのが長時間労働の一因となっているようだ。

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