渋谷区で同性パートナーシップ制度が成立し、区長にはLGBTフレンドリーを前面に押し出す長谷部健氏が当選した。こうした動きに対し、統一教会の信者らが激しく反対しているという。韓国系宗教団体の人々が何ゆえ!? との思いから、この問題をきっかけに、日韓をまたにかけた宗教団体の動きについて取材してみようと考えた。しかしなかなかどうして、両国とも現場の構図は複雑である。のんびりルポするよりも、事情に詳しい当事者の話を紹介した方が情報としては有益だろう。以下に、ある男性同性愛者とのやり取りを記す。
朝日新聞に登場した「しきしま会」と在特会
問:渋谷区の区長に当選した長谷部健氏についてどう思うか?
「『長谷部さん当選おめでとう』と言われると、とても複雑な気分になる。長谷部氏は宮下公園のホームレスを排除するなど弱者に冷たい一方で、LGBTフレンドリーを標榜する。彼を支持することは別の弱者の排除につながるかもしれないが、支持しなければようやく手に入れた成果が失われてしまうかもしれない。渋谷区民だったらもっと悩んでいたと思う」
問:ところで、先月29日付の朝日新聞に渋谷区の同性パートナーショップ制度に反対する人々の声が紹介されていたが、読んでみてどう思ったか。
「あれはひどい。記者は様々な意見を紹介したかったようだが、よりによってなぜ『しきしま会』を選んだのか。記事では触れられていないが、彼らは在特会と共にヘイトスピーチ・デモをやっている連中だ。」
問:『まともに』同性パートナーシップ制度に反対する人々の意見を聞いて議論を交わしたい?
「そもそも、まともな論理を持って同性パートナーシップ制度に反対している人なんているのかが疑問。『制度は日本の伝統的な家族制度を破壊する』と言うが、その伝統はどこに基準を置いたものなのか。平安時代なのか、江戸時代なのか、昭和なのか。彼らにはまともな論理などない。逆張りをしているだけだ。」
「頑張れ日本という在特会に非常に近い団体が渋谷のハチ公前で同性パートナーシップ制度に反対する街宣(クリック⇒参考記事)を行っていたが、内容が無茶苦茶だった。『私にも同性愛者の友だちがいるがお前らとは違う』とか『もう女性との恋愛の歌が歌えなくなる』とか低劣、低レベル。カウンター(抗議活動)をしているうちに気分が悪くなった。演説内容もそうだし、反同性愛のチラシを配っている人々の悪意に満ちた目線に耐えられなくなった」
「朝日新聞も両論併記のドグマから抜けだして、ダメなものにはダメとはっきり言うべき。そんなやり方で公平を装うのは止めにして欲しい。少数者が幸福を追求する権利を口汚く罵るのは明らかにヘイトスピーチであって、現行法で対処できないのなら新たな規制の枠組みを検討すべきだ」
外国での動きと比べると…
問:日本はアメリカ同様に表現の自由への規制を避けようとする。
「アメリカの場合、必ずしもそうとは言えない。ウェストボロ・バプティスト・チャーチという集団は、戦地で死んだ米兵や同性愛者の葬式に押しかけて『米国はオカマの国だからお前は天罰で死んだ』などの正視に耐えない内容のプラカードを持ってデモをする。あまりの酷さに接近禁止命令や罰金刑が下されている。表現の自由を重んじるアメリカでも、最低限の措置は取られている。ところが、日本政府は何もしていない。表現の自由を守っているんじゃなく、差別を放置しているだけ」
問:そんなにひどい?
「アメリカの宗教右派の論理は『神の教えに反する同性愛が広まるとこの世が滅びる』というもの。お隣の韓国の宗教右派の場合、そこにナショナリズムがくっついて『国と民族が滅びる』となるのでさらにやっかいだ。韓国でも、性的少数者らマイノリティの権利回復の流れは不可逆的になっている。それでも彼らは、その流れを止めなければ本当に滅びると信じきっている。
そういった人々に、論理や言論で対抗しても無駄だ。自分たちを排除しようとする人間から自分を守るには、彼らを社会から排除するしかないとさえ思えてくる。いつかわかりあえるという理想論は捨てずに取っておきたいが『ああいうのもひとつの意見だから』とかいう相対主義こそがお花畑だ」
問:韓国の宗教右派のそういった傾向は、日本にも影響する?
「日本には数多くの韓国のキリスト教系カルトが進出している。統一教会(クリック⇒参考記事)が有名だが、別の韓国のキリスト教系カルト(クリック⇒参考記事)が日本に進出しているらしい。彼らは非常に保守的で攻撃的で異端視されている『新使徒運動』の一派と言われていて、皆一様にホモフォビック(同性愛嫌悪)で多様性を許容していない」
問:どのような教理でそうなるのか?
「端的に言うと社会を7つの分野に分けて、それらすべてがキリスト教化された時にイエス・キリストが再臨するというものだ。教団ごとに多少は異なるがホモフォビア、ゼノフォビア、イスラモフォビアが特徴と言っても過言ではない」
問:ウガンダの反同性愛法(クリック⇒参考記事)はアメリカの宗教右派が裏で糸を引いているという話がある。
「ウガンダのホモフォビアを煽り多くのLGBT(特にゲイ)を死に至らしめたスコット・リブレイはアメリカの宗教右派で福音主義の活動家だ。ウガンダは元々クリスチャンの多い国で、イギリスの植民地時代から反同性愛法があった。単純に日本とは比較できないが、アメリカ宗教右派の『ホモフォビア輸出』を見ていると、日本にとっても他人事じゃないなと思っている」
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