「月2.9%の利率で最長60カ月まで、美容整形の費用をお貸しします」
今月6日午後、ソウル市瑞草区蚕院洞のオフィステル(オフィスとしても利用可能な住居物件)地下1階にある、貸金業者のオフィス。看板もなく、机が一つだけぽつんと置かれた相談室で会ったA氏は、記者の信用情報を確認すると「最大で2000万ウォン(約220万円)貸せる」と言った。その言葉に記者が喜ぶ様子を見せると、A氏は「ただし、私たちが指定する美容外科で手術を受けることが貸付の条件だ」と言い、病院から手術費の見積もりを取ってくれば、できるだけ安くなるよう病院側と交渉すると説明した。A氏はまた「借りたカネは全て手術に使うように」と言い添えた。
A氏はいわば、ソウルの江南エリアでひそかに活動する「美容整形ブローカー」だ。今年に入り、すでに300人以上の患者と取引したという。
本紙がインターネット広告などを見て、美容整形のためのローンを専門とする貸金業者5カ所に相談に出向いたところ、貸付の条件や方法はほぼ同じだった。簡単な面談をした後に携帯電話のチャットで江南の有名病院2-3カ所を指定し、カウンセリング予約を取ってくれた。ある貸金業者は、江南の特定の美容外科について「私たちが1カ月に約10人の患者を紹介しており、信頼が厚い」と言い、病院側と手術の費用や日にちを調整すると説明した。「就職を準備中の大学生であまりカネがない」と訴えると、業者は年30%水準の高い利率を適用し「元金はゆっくり返済しても構わないので、心配するな」と記者を安心させた。
「美容整形ブローカー」は、美容整形を望んでいるものの手元資金が十分でない人に手術費を貸し付ける。正式な貸金業者として登録されており、はた目には問題なさそうに見えるが、実際には特定の病院で手術を受けることを条件に費用を高利で貸し付けているのだ。
紹介の見返りに病院側から裏金を受け取れば、これは医療法違反に当たる。ソウル江南警察署は7日、美容整形を望む患者に特定の病院を紹介し、手術費の一部を手数料として受け取った容疑で、29歳の男らブローカー2人を逮捕したと発表した。また、2人から患者の紹介を受け紹介料を払ったとして、55歳の医師ら美容外科医3人と病院関係者9人の計12人を在宅のまま立件した。
警察によると、ブローカーらは2013年1月から昨年6月にかけて貸金業を営み、江南の美容外科3カ所に約50人の患者を紹介し、計5億ウォン(約5500万円)余りの手術費のうち約1億ウォン(約1100万円)を受け取った疑いが持たれている。一般的な美容整形ローンは、業者が患者に手術費を貸してすぐに病院側へ払わせ、医師から後で紹介料を受け取るケースが多い。だが、逮捕されたブローカーは、病院に後払いで手術を行わせ、患者には手術費と利子を分割で返済させ、手数料を除いた手術費を病院側に支払うという、いわば「後払い美容整形」の手法を使っていた。自分たちのカネは一切使わず、病院からは紹介料を、患者からは利子を受け取っていたのだ。