事実に目を向けようとしない米国の日本歴史学界
モーガン氏の見解の骨子は以下の通りである。
・ダデン教授ら19人による声明は、慰安婦に関する日本政府の事実提起の主張を言論弾圧と非難するが、その非難の根拠となる事実をまったく明示していない。この点は、学問を探求する当事者として偽善としか呼びようがない。
・声明は、日本の吉見義明氏の研究を「20万強制連行」などのほぼ唯一の論拠として言及している。だが、吉見氏も慰安婦の強制連行の証拠はないことを認めている。同声明は、日本軍による多数の慰安婦殺害や天皇の贈り物などという記述になんの根拠もないことにも触れようとしない。
・声明は、米国の研究者も年来依拠してきた吉田清治証言の虚構や朝日新聞の誤報にまったく触れていない。事実を優先すべき歴史研究で不都合な事実を意図的に無視する態度は、学問の基本倫理に違反している。
・声明は、日本側からの慰安婦問題に関する事実の提起を、「右翼」「保守」「修正主義」などという表現で片づけている。この種の用語は侮蔑的なレッテル言葉であり、実体のある意味がなく、真剣な議論を拒むための煙幕にすぎない。
・声明は、日本政府の動きを中国などの独裁国家の言論弾圧と同等に扱い、学問や言論の弾圧を恒常的に実施しているかのように描いている。だが、自分たちがその日本政府機関からの資金で日本研究を行ってきた事実を無視している。
以上の主張を表明したモーガン氏は、「米国の日本歴史学界で、この19人の明らかに錯誤している意見に誰も反対しないという状態こそ、学問の自由の重大なゆがみだと思う」と強調するのだった。
慰安婦問題で事実に基づく主張に耳を傾けようとしない米国の日本研究者の研究姿勢が、モーガン氏の反論によって改まることを期待したいところである。