日本側の抗議を封じた米国の歴史学者たち
新進学者による今回の批判のもともとの契機となったのは、米国の大手出版社マグロウヒル社の高校生用歴史教科書の慰安婦についての誤記だった(当コラム「ワシントン・ポストに噛みついた『反日』団体幹部」」を参照)。この教科書の記述には以下の内容が含まれていた。
「慰安婦は日本軍の強制連行による20万人の性奴隷だった」
「日本軍は終戦時に証拠隠滅のため慰安婦多数を殺した」
「慰安婦は天皇から日本軍への贈り物だった」
いずれもなんの根拠もない誤記である。
日本の外務省は当然ながら2014年11月、出版社と著者に記述の訂正を求めた。しかし出版社も著者も訂正はもちろん、記述の是非を論じることさえ拒否した。
この動きに対して、米国の歴史学者たちが2015年3月、日本側の抗議は「学問や言論の自由への侵害だ」とする声明を発表したのである。
この声明は、慰安婦問題を取り上げて長年日本を糾弾してきたことで知られるコネチカット大学のアレクシス・ダデン教授が中心となり、コロンビア大学のキャロル・グラック教授や、問題記事の筆者であるハワイ大学ハーバート・ジーグラー准教授ら合計19人によって署名されていた。
ちなみにダデン教授は2000年の「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」の主催者の一員だった。昭和天皇を有罪と断じたあの模擬裁判である。ダデン氏は安倍首相への攻撃を年来続け、「悪漢」「裸の王様」などという侮蔑的な言葉を連発してきた経緯がある。