きょうのテーマは久々に「夫婦(ゲンカ)」。私は自分が「働くママ」でありますので、いつもどうしても「ママ」に肩入れしてしまう。Twitterでもついついママたちとキャッキャウフフしてしまいます。しかしそれでは、現実を正しく掴めないので、もっとフラットに「夫」「妻」を見ることができている人に話を聞いてみたいな…と思いました。最近は、「夫」さんの気持ちにも寄り添いたい、そういうふうに考えています。また、私は常々、「家庭」内の問題が、私的領域だからという理由でアウトプットしづらい・あまりに外から見えづらい状態は時に不健全だし怖いなと思っていて、なにかしら家庭を「外」へ開くことに興味関心を持ち続けています。そこで、以前に夫婦コーチングを受けさせて頂いたことのある平田香苗さんに、久々にチャットでお話をうかがいました。
ちなみに今回のインタビューは、サイボウズの動画第二弾がプチ炎上(リンク)した今年の2月頃に実施したものです。その後、私が多忙を極めてしまい、公開が遅れていました。でも、いま読み返しても、とっても貴重なお話になっていると思います。一万字近くあるので、前後編に分けますね。
■ 〜はじめに〜「働くママ支援」きっかけは会社での差別
平田/ こんばんは~よろしくお願いします。
kobeni/ よろしくお願いします〜^^ とつぜんすいません。
平田/ いいえ、こちらこそ!
kobeni/ サイボウズの動画をきっかけに、にわかに「(夫婦でお互いに)『寄り添う』ってなんだ」みたいなことに注目が集まっている気がして…。私のTLでも、夫は夫、妻は妻で、別個に主張している感じでした。
ちなみに平田さんは、第二弾の動画はどういう風にご覧になりました?
平田/ えへへ。実は第二弾は見ていないんですよ。気持ち悪くなるって評判を聞いていたんで。
kobeni/ 観てないんだ!!ちょっと今観てもらっていいすか!!
平田/ ちょっと見てきますね。
kobeni/ すいません><
平田/ お待たせしました~ やっぱ、ダメだ。イラついてきたwww
kobeni/ あ、そうですか… どんなとこがイラつきます?
平田/ この女性はどうして一人で抱えてるんだろうね?自分がその状況を作り出してるよね、多かれ少なかれ。
kobeni/ そうなんですよね。話しあって納得してこうなったのか、「自分がやるべき」と思ってこうなったのか、もう分担を諦めてしまっているのか、よく分からないんですよね。
平田/ この女性の価値観や、配偶者の状況がわからないから、どうにも判断できないけどね。
たとえば単身赴任だったら仕方がないよねえ。
kobeni/ うーんでも、「パパに言うほどのことでもないわけ」って言ってるから、単身赴任ではないのかなって…
結局、動画を観て怒っていたママたちって、想定されるケースの中でいちばん嫌なケース=「母親が、ぜんぶ自分がやるべきと思い込んでいる」を想定して、そんなんダメだよ!って怒ったのかなと思って。
平田/ この女性は「全部自分がやるべき」と思い込んでるんじゃないのかな?「ママにしかできないことってあるよね」って言ってたのはこの人だよね。
kobeni/ やっぱり、思い込んでいるのか……
ええと、本題に入ろうと思うのですが。
けっこうそもそもの話なのですが、平田さんがワーキングマザーを応援しようと思ったのは、いつごろで、どんな体験がきっかけだったんですか?(※平田さんはワーキングマザー支援団体の活動もされています)
平田/ もともと会社員だったときに、子供を産んでも自分のモチベーションを維持しながら働くことにものすごく興味があって、自己啓発系の本を読んだりセミナーに行きたい(けど実際は行けない)と思ったりしてたのね。Twitterにも書いたけど、就職するときから「出産後も働く」ってビジョンを持っていたので、ワーキングマザーとして生きるということに対しては情報も集めたし、試行錯誤もしてきたの。その辛さとか体験とか思いとかがあって、後に続く人をフォローできないかな、っていうのが背景です。
kobeni/ 就職されたのって何年ぐらいですか?西暦で。
平田/ 1990年かな。
kobeni/ ふむ、私の10年前だな。大先輩ですなー!
平田/ バブル採用ですよー
kobeni/ 「辛さ」ってどんなことがあったんですか?
平田/ 性差別ね。
最初の配属から洗礼を受けてね、専門職採用だったのね。で、男性はみな本社の専門職部門に配属されて、私ともう一人の女性は文系採用と同じ支社配属だったの。資格試験を取らなくちゃいけないんだけど実務経験がないわけさ。
なので、必至に勉強して(しかも支社の方が残業時間が多い)専門部署に異動させてもらえるようにアピールしたの。
平田/ 残業と言えば、36協定があって、女子総合職は月に30時間(だったかな?)しか残業しちゃいけないことになっていて、でも実際はそんなの数日で消化しちゃうわけ。だから、タイムカード先に押してサービス残業。男性総合職は同じだけ働いて残業代出るのにね。
kobeni/ 大変に分かりやすい差別ですね…直接なにか男性上司に言われたりしたんですか?
平田/ 「36協定があるんだから、タイムカード押して」って。押し忘れて基準値オーバーしちゃったら「訂正して」って。捏造ですよ。
数年後に本社に戻った際、一度、他部署の組合の人が人事に私のことを通報して、上司が注意を受けたことがあったなあ。なんせ、その建物で一番遅くまで残ってたからね。毎晩守衛さんに心配されてた。
まあ、でもこんなのは差別としては序の口で。
「女子総合職にのみ、3カ月おき転居を伴う異動発令事件」とか「女子総合職なのに一般職の制服着用義務付け事件」とかいろいろ……
kobeni/ ひぃぃぃぃぃ
女性が働き続けること自体が、ものすごく拒否されてる感じだったんですね。でもあれか、その頃って、周囲の女性も「え?結婚して辞めないの?」みたいな感じだったのでは?
平田/ 社外の人との結婚だと、一般職の人も働き続けてたよね。(でもWMは少なかったなあ)社内結婚だと、どちらかがやめなくちゃいけなくて、必然的に女性が退職していたね。
kobeni/ (´・ω・`)ショボ 今の世代の総合職女性がその10年後に、出産までは特に差別を感じずに居られるようになったのって、ホントに平田さん達のおかげですよね… でも「出産までは」なんですけどね……
■ 現代の結婚=ソウルメイト?
というところで、「夫婦コーチング」の話ですが。
ちょっと前置きですが、私自身は、この「仕事と育児の両立」の問題って、だいぶスケールが大きくて、「ワークライフバランス・カフェ」の運営をやっていても、「いま話題にしているのは『政治や社会などの枠組みの話なのか』『個人の、日々のサバイバルの話なのか』」っていうことを、すごく意識しています。基本的に夜カフェ(土曜の夜に、ハッシュタグ#wlb_cafe上で行う情報交換。不定期開催)みたいなものは、「個人のサバイバル・両立のためのライフハック共有」の方が、向いていると思っています。それ以外のこともやりますけどね。難しい本の読書会とか。
たしか私が、「夫婦コーチング受けてみませんか?」って誘って頂いた時、夫婦コーチングを始められたばっかりでしたよね。あれから5年くらい経ちますが、どうですか?「受けたい」っていう方、増えてきていますか?
平田/ 「それ必要だよね」という声は5年前も今も変わらないと思うんですが、私がこういうことをやっている、ということは5年前よりも浸透したかも。半径1m以内ですがw
kobeni/ 5年間で、何組ぐらい担当されましたか?
平田/ 夫婦は20ちょっとじゃないかな。ざっと数えたので、漏れがあるかもしれないけど。
kobeni/ あれ。意外と少ない…もっとあるかと思ったのに。
奥さんだけの相談、とかそういうのはあります?
平田/ 奥さんだけの相談とか、夫さんだけの相談とかね。でもメールベースで終わっちゃうことが多いかな。
コーチング自体は3~4ヶ月かかるので、あまり複数組を同時には担当できないです。だいたい皆さん土日希望だし。
なので、数で言ったら組織の案件の方が多いかもね。
kobeni/ あ。そうか、ひとつのご夫婦に3〜4ヶ月かかるのか。そりゃ、そんなにたくさんは担当できないですね。
ええと、夫婦の関係とか、在り方って、本当に千差万別だと思うのですが、私は、みんな同じひとつの時間を生きている以上、「時代」が影を落とすことって、あると思うんですね。
なにか、「全体傾向」みたいなものってありますか?つまり、「こういう悩みが多い」「こういうすれ違いが多い」など。
平田/ 時代ということで言うと、今の結婚ってソウルメイトというか、自分を心底理解してくれることを相手に求めますよね。昔の結婚って、そうじゃなかったんだと思うんだけど。相手も親が決めちゃったり。
そういう意味で、今の結婚の方が、続けるのに難易度が高いんだろうなあと思っています。
kobeni/ なるほどー。お互いに、期待値が高いという感じ?
平田/ そうそう。「結婚とはそういうものだ」「パートナーとはそういうものだ」っていうやつの期待値が高い。それが別に悪いわけじゃないんだけどね。
■ 夫は「わたしを理解してくれない」のか
kobeni/ 「悩み」の中心って、どのあたりにあります?
平田/ つきつめると「私を理解してくれていない」じゃないですか?
家事育児分担の話にしても何にしても。
kobeni/ いま、話者が奥さんになっていますが、奥さんが悩んで夫を連れて来るケースが多い?
平田/ 半々です。男性の知人も多いので。
ただ、そういう男性の半分は「奥さんにいつも怒られてるから」だったりしますw
kobeni/ ちなみに、いま話題にしているご夫婦って、共働きですか?
平田/ 特定の一組を想定してお話しているわけでもないのですが、共働きの夫婦の方が多いですね。専業主婦は一、二組かも。
kobeni/ なるほど。前置きで「個人の話と、政治や社会の話(を分けるよう意識する)」と言ったんですが、奥さんの「私を理解してくれていない」は、もっぱら個人の生き方の話なわけですか?それとも、その「私」っていうのは、「私」の所属している企業、今の仕事内容、みたいなことまで意識が及んでいる?
平田/ 個人の生き方から、仕事の内容から、子供の状態(職場にどのくらい頻繁に電話がかかってきてどんな気持ちで会社を出て…)までぜーんぶですね。ただ、「意識が及んでいる」という部分を明確にすると、個人の生き方の部分は意識下にあって、コーチングをやっていくうちに顕在化してくる部分もあります。
kobeni/ そっか、じゃあ奥さんの悩みっていうのは、「私の大変さを理解して。そして分担してほしい、できないならせめて寄り添って」…ってそれサイボウズの第一弾の動画ですね。
平田/ そうですね。今、頭の中にある数組はそんな感じ。
kobeni/ で、ダンナさんはどうして「理解できてない」のだと思われますか?
平田/ その要因はいろいろだと思います。そしてあまりそこには焦点を当てないので何とも言えないのですが、まあ、理解できるようなやり取りが二人の間でされていなかったということですよね。
■ 「言わなくてもわかって」問題
そして、それは何も「ダンナさんが奥さんを理解できていない」だけの話ではなく、「奥さんもダンナさんを理解できていない」のですが。
kobeni/ なるほど。「『(夫が)理解できないこと』が理解できてない」っていう感じなのかなと想像したのですが。
平田/ 「気づいて当然」と、双方が思ってるわけですよね。
kobeni/ よく、「言わなくてもわかるだろ」って、男性がとる態度としてひきあいに出されますが、奥さんの方も、「言わなくてもわかってくれるはず」と思っているのでしょうか?
平田/ 恐らく。よくTLでも「察しろよ」ってつぶやいてるじゃないですか、皆さん。「なんで帰ってきてテレビ見てるんだ、信じられない」とか。
kobeni/ なんでTwitterには書けて直接言えないのか? ってことか。
私は、割と「辛い」とか「おかしい」とか思ったら小出しにする方で、もちろん両立生活の最初の頃は何度も衝突があったのですね。でもそれは、私も不慣れで、復帰する前の自分と比べてしまったりして、過度に被害者意識を持っていたところはあると思います。
そういう状態の中で奥さんが、すごく大変で、小出しにはせず突然キレる。っていうケースを、割と身近で聞いたんですけども。「なんで帰ってきてテレビ見てるんだ、信じられない」って、なんでその時、子育てや家事で大変な時に言えないのかな…?
■ 夫婦間に横たわる「力の格差」
平田/ そこに、kobeniさんがおっしゃっていた「社会の問題」も多分に影響していると思うんです。
コーチング用語でランクっていうんですけど、力の格差があって。それはお金だったり、発言力だったり、年齢だったり、経験だったり…。
多くの夫婦の場合、収入面では夫>妻なので、そこにはお金のランクがあって、ランクが下の人は発言しづらかったりします。
逆に、子供のケアとか家事のやり方はランクが妻>夫になるので、妻は「こんなやり方じゃぜんぜんダメ!」って言いやすいし、本人が思っている以上のダメージをランク下の人に与えます。
もちろん、すべての夫婦に収入のランクがあるわけではないのですが、影響は少なくないと思っています。
kobeni/ 家庭内序列…!たしかコーチングって、「最も弱い立場の人の声こそ届くべき」でしたよね。
平田/ そうそう。そこに関係を改善するヒントがあるんです。
kobeni/ えーとじゃあ、奥さんは、本当は「そんな、ソファに座ってないで、皿洗いのひとつもしてよ…」って思っているけど、ランク下(!)だから、言わずにガマンしているってこと…?!
平田/ 「私の方が稼ぎが少ないから家事やれってことでしょ。はい、やりますよやりますよ」とか心の中でいいながらね。
もしくは、「お金の問題さえなければとっとと離婚してやるのに」とか。
kobeni/ ひぃぃぃぃ(予想外の展開だった…)
平田/ 実際、「俺は疲れてるんだ。そんなに言うなら俺が皿を洗ってもいいけど、代わりに今の俺と同じ額を稼いでこいよな」って言っちゃうダンナさんもいますよね。
kobeni/ ひぃぃぃぃぃ(涙目)
いかがですか!私が、涙目になったところで前編終了です。後編へ続きます。平田コーチはどうやって夫婦の問題を解決するのか、乞うご期待…!