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西島建男の読書日記

2015-05-04

S・パルンビら『極限の海洋生物』

S・パルンビら著『海の極限生物』

      海洋生物が好きな人には、こたえられない本である。極限の海洋環境で生きている生物が様々に取り上げられ、色彩豊かな写真も魅力的なのだ。その生態もアメリカの海洋生物学者・パルンビ氏の、最新の研究により面白く書かれている。

      深海の煮えたぎるとする80度の熱水噴出孔をただひとつの食料源とするポンペイワーム(写真がきれい過ぎる)、高齢さではハワイ沖深海の4270歳のクロサンゴ、死んだクジラの骨を食べるオセダックス南極海でマイナスの冷温下で、脅威の天然不凍タンパク質を作り生きるコウリウオ、ナンキョクオキアミ、メカジキは眼球ヒーターを使い視覚を向上させる。

       オセダックスは、メスばかりで眼のないゾンビワームだが、チョウチンアンコウのオスは、何十倍大きい凶暴なメスを探し、寄生し融合し一体化して溶け精巣だけ残し子孫を残す。タツノオトシゴはオスが妊娠し、子育てをする。その生態も詳しく述べられている。逆にミズダコのメスは、六ヶ月も何も食べず卵の世話をし、コダコが巣立つと死んでいく。メスは次世代の義務を果たし気高い死を遂げるが、オスは老化認知症で捕食されていく。

       海の極限生物は、狭いニッチ(生き場所)で特殊化した専門店経営に似ているとバルンビ氏はいう。ちょっとした環境変化で絶滅する。1度の海温上昇、二酸化炭素の炭酸化による酸化富栄養化をもたらし、単細胞藻類の増殖の赤潮など起こす。さらに人間の乱獲は、食物連鎖の断絶をもたらす。クラゲの海になり、サンゴは窒息していく。海面上昇は、近海や潮間帯の生物に大きな影響を与える。

       海の生態系は極限にきている。だが、人間が効果有る対応をとれば、海洋生物は極限を生き続けてきたのだから、海は生き返るとパルンビ氏はみているのである。(築地書館

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