建設分野の人材を確保するために、特別の在留資格で外国人技能実習生の滞在期間を延長したり、いったん帰国した人を再び受け入れたりする、2020年度までの時限措置が始まった。
来年以降は東京五輪の関連施設の建設が本格化し、人手不足が深刻になる可能性が高い。国内での人材確保とともに、即戦力の外国人を一時的に拡大する対応はやむを得まい。政府は今回の措置で外国人材の倍増を見込む。
だが、外国人材の確保は政府が考えるほど容易ではない。中国などアジア地域でも賃金が上昇し、日本は以前ほど魅力的な就業の場でなくなっているからだ。
実習生の有力受け入れ団体である全国鉄筋工事業協会は、過去に実習した700人以上の中国人を対象に再来日の可能性を探った。だが、本人と連絡がとれ契約できたのは、19人にとどまる。
政府は今回の措置にあたり、実習体制の管理を厳格にし、受け入れ企業には日本人と同等以上の給与を支払うことを義務付けた。労働人口の減少を踏まえ、20年度以降も外国人材の活用を考えるのであれば、日本の労働市場を魅力的にしなければならない。
そのためにも、まず日本人の労働環境を改善すべきだ。人手不足によって賃金が上昇し、建設大手が下請け企業の人材に対し、技能習得に応じて追加給付金を払う制度などが広がってきたことは朗報だ。ただ、社会保険の未加入問題は解決できていない。建設現場に女性の技能者を受け入れるための環境整備も欠かせない。
一方で建設現場の作業を軽減し省力化する企業の技術革新が重要だ。綿密な計画をたて事前にコンクリート部材を組み立てることで必要な人手とムダを減らす工夫は、効果を上げている。
大林組はIT(情報技術)を利用した建設計画に取り組む。竹中工務店はロボット技術で作業負担を軽くする研究などを進める。人手不足の解消に魔法のつえはない。多角的な対策が必要だ。