【クレジット市場】アップル初の円債発行か、電話会議開催へ
2015/05/07 06:48 JST
(ブルームバーグ):米アップル は円建て債起債に向け、7日に投資家との電話会議を開始する。アップルは既にユーロ建てやスイス・フラン建ての社債を発行している。
アップルは一連の投資家電話会議の幹事として、ゴールドマン・サックス・グループと三菱UFJフィナンシャルグループを起用したと、ゴールドマンが1日に電子メールで明らかにした。その後に起債する可能性があるという。ブルームバーグがまとめたデータによれば、円建て債発行はアップルにとって初めてとなる。
物言う投資家のカール・アイカーン氏などが株主への利益還元拡大を求める中、アップルは世界的に低い金利を生かしてその原資を確保しようとしている。海外の発行体による円建て起債は今年に入り細っているため、日本の投資家からの需要は見込める。投資家はまた、世界的トップクラスの製造業企業の社債を加えることでポートフォリオの多様性を高めることができると、大和証券グループが指摘した。
大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリストは「サムライ債や、円建てで海外の発行体のものはほとんどが金融機関債なので、業種の分散という意味でアップルのような製造業の円債があれば投資家サイドとしては歓迎だと思う」と述べた。アップルは「格付けがいいし、ネームもいい」と付け加えた。
アップルは先週、増配と自社株買い増額によって2017年3月末までの株主還元プログラムの規模を700億ドル(約8兆3900億円)拡大すると発表した。
SMBC日興証券の伴豊チーフクレジットアナリストは、アップルは誰もが知っている有名企業なので安心感があると指摘。スプレッドが悪くなければ多くの投資家が買うだろうと話した。
一方で、円建て債の利回りの低さから敬遠する投資家もいそうだ。バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの指数によれば、サムライ債の平均利回りは5日に0.48%と、1月に記録した0.44%に近づいた。0.44%はデータ算出を開始して以来の最低。
富国生命保険の鈴木善之・資金債券部長は「今は円債券に魅力を感じていない」とし、「よほどスプレッドが乗ってくれば考えないことはない」という姿勢だと述べた。
東京在勤のアップルの広報担当、竹林賢氏は1日の電話取材に対しコメントを控えた。
欧州の一部の国では国債利回りが日本よりさらに低いため、欧州の投資家が買う可能性もある。
ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントの調査アナリスト、ジャック・マッキンタイア氏は1日の電話インタビューで、海外の投資家が円建て債に投資するには「円について前向きでなければならないが、当社はそうではない」と指摘。ドルが上昇すると考えれば、最終的に資金をドルに戻さなければならない投資家にとって円建て債の妙味は薄いと語った。
アップル債に関心を持つ日本の投資家は年限によってタイプが異なるだろうと大和の大橋氏は指摘。地銀は5年程度の中期債、保険会社ならもっと長期を好むだろうと述べ、アップルが円建てで起債すると決めたのならば特定の投資家層に狙いを定めるのだろうと話した。
原題:Apple Reaches Out to Investors as Debut Yen Bond Sale Considered(抜粋)
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更新日時: 2015/05/07 06:48 JST