やまなしなひび-Diary SIDE-

狂っているのは誰だ

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世の中には、「ネタバレをして欲しい人」がいるという大切な事実

 私は常日頃「世の中は色んな人がいるからこそ面白い」と思っています。
 その真意をもっと噛み砕いて説明すると、「“私の考え”というのは世の中に無数にあるたくさんの“考え”の一つでしかなくて」、「“私以外の人の考え”は“私”には到底考えられなくて」、「“私”が一人でどんなに一生懸命考えても分からない答えのヒントを“私以外の人”が何気なく持っていたりする」から、「色んなバリエーションの“私以外”がいる方が面白い」――――ということなのです。

 噛み砕きすぎて、より分かりづらい抽象的な話になってしまいましたが……今日の話は、これを象徴するような話だったので冒頭で敢えて説明しました。


 今日の話題は「ネタバレ」問題です。
 「ネタバレ」の話はブログで話題にすると炎上する案件TOP3に入るほどの劇物なので、なるべく話題にしたくないと思いがちです。私もなるべく避けたいし、多くの人が敢えて話題にすることもないので、その結果“たくさんの人の考え”が明文化されないままになってしまっていると思うんですね。

 「ネタバレ」問題を語ると、よく「どこからがネタバレなのかは人それぞれ違うので難しいですね」みたいな話になりがちです。私はこれ、全然難しいことではないと思います。「人それぞれ違う」と分かっているのなら、「どこまで言ってイイですか?」と相手に聞けばイイだけです。


 本当の問題は、「人それぞれ違う」ことが分かっていないからこそ起こるのです。


 私は「ネタバレ」に関しては、「出来る限り何も知らないでいたい」派の最右翼くらいの人間だろうと思います。ゲームを始める前に説明書を読むとネタバレになるから読まない、ドラマやアニメの次回予告を観るとネタバレになるから観ない、原作を読んでいる漫画がアニメ化しても既にネタバレになっているからアニメ自体を観ない―――極端な例を挙げるとこんなところです。

 しかし、「どうしてそんなにネタバレがイヤなの?」と訊かれても上手く答えられませんでした。「だって、つまんなくなるじゃん」というのが私の率直な答えなのですが、「そんなことないよ」と言われて終わり。自分にとって「ネタバレされたらつまんなくなるじゃん」ということは当たり前なこと過ぎて、理由を説明できなかったのです。

 これも言ってしまえば「“私”が一人でどんなに一生懸命考えても分からない答え」だったのです。
 そして、私もまた「人それぞれ違う」ことが分かっていないからこそ「ネタバレされたらつまんなくなるじゃん」という説明しか出来なかったと思うのです。




 最近になって、ようやく私は気付きました。
 世の中には「ネタバレされた方が嬉しい人」がいる―――ということを。

 1ヶ月くらい前のことです。Twitterで仲の良いフォロワーさんが(鍵アカなので紹介はしません)、「私はネタバレされたい人なのでみんなもっと好きな作品のネタバレ語りをして欲しい」と呟いているのを見かけて雷が落ちたような衝撃を受けました。

 私はネタバレに関しては、
 「ネタバレされたくない人」←―――→「ネタバレが気にならない人」というグラデーションだと思っていたのです。

 でも、世の中には「ネタバレされたい人」がいるのです。
 「ネタバレされたくない人」←――「ネタバレが気にならない人」――→「ネタバレされたい人」というグラデーションが正確なのです。


 今まで私は「私はネタバレされたい人だっ!」という自己申告を受けたことが一度もなかったので考えもしませんでしたが、しかし実際にはそういう自己申告をしないだけで「ネタバレされたい人」って結構多いんじゃないかと思うのです。今までずっと疑問だったことが、これで一本の線に繋がった気がしました。


 私の友達に、西尾維新先生の『物語』シリーズのアニメが大好きな友達がいます。あくまで好きなのはアニメだけで原作小説は読んでいないそうなのですが、彼は「今度『○物語』がアニメ化されて放映される」と分かったらアニメを観る前にWikipediaを熟読してどんなあらすじなのかを把握してからアニメを観るそうなんです。

 その話を聞いた時、世の中にはこんな変人もいるのかと正直思いました。
 原作者は「Wikipediaであらすじだけ読まれる」ために小説を書いているワケではないし、アニメスタッフも「原作小説のファン」か「アニメから入ってくる人」に向けて作っていると思うのです。Wikipediaの熟読者に向けて作っているとは思えません。だから、作り手に対して失礼じゃないかと思ったほどです。


 しかし、前述したように、この人に限らず「ネタバレされたい人」は存在するのです。Wikipediaで確認するかはさておき、事前にあらすじを知っておきたいって人は意外にいるんじゃないかと思うのです。

 これは昔とあるラジオで読まれていたメールなので、実在するのかネタメールなのかは微妙ではあるんですが……推理小説を買ったら、後ろから先に読んで「犯人」だとか「トリック」だとかを最初に知り、その後に本編を最初から読んで「俺は犯人を知っているもんね」という神の視点で読むのが好きだ。って人の話を聴いたことがあります。

 「なんじゃそりゃ」「そんなことして何が面白いの?」と正直思ったのですが、その反面「なるほど、その手があったか」と思ったところもありました。私が推理小説を読む場合、もちろん最初から最後まで順番に読みます。途中で推理できた場合もありますし、最後まで推理できなくて「やられたー!」と思うこともあります。面白かった推理小説は2周目を読んで、「なるほど!ここに伏線があったのか!」と楽しんだりします。

 つまり、「何も知らない1周目」と「真相を知っている2周目」を私は楽しみたいのですが、1周目をすっ飛ばして「真相を知っている2周目」だけを楽しみたいって人は最初に「犯人」や「トリック」を読んじゃえばイイってことなんですね。
 それは「2周読む時間が勿体ない」って理由もあるでしょうし、「犯人やトリックが分からないままモヤモヤした気持ちで読むのが苦しい」って理由もあるんじゃないかと思います。私にとっては「そのモヤモヤした気持ちが楽しいんじゃん」なのですが、それが要らない人もいるんです。



 少しずつ核心が見えてきました。
 「推理小説の犯人やトリック」ほど極端な例でないとしても……「ハッピーエンド」だと分かっているから安心して観られるジャンルの映画ってありますもんね。疲れきった体で週末に一本くらい映画を観ようかなと思った時に、「ハッピーエンドになるのかバッドエンドになるのか分からなくてドキドキしたくない」「観てスッキリするハッピーエンドの映画が観たい」という気持ち。何となく分かる人も多いんじゃないでしょうか。
 シリーズものだったり、ファミリー向け映画だったりの強さって多分こういうところにあると思うんです。

 そう言えば……「ネタバレされたい人」という衝撃的な言葉を私に教えてくれた鍵付きのフォロワーさんは、昔『たまこまーけっと』について「主人公が最終的に誰とくっつくのか教えてくれたら観るのに」と言っていたことがあって。当時は「いやいやいや!そこが一番重要なんだから、それ言っちゃったら面白くないでしょ!」と思ったのですが、今にして思えば「そういう話かー」と腑に落ちますね。



 私が「好きな漫画がアニメ化されても観ない」というのに対して、逆に「好きな漫画のアニメ化はあらすじが分かっているから安心して観られるけど、それ以外は観るのが疲れてしまう」と言われたことがあります。
 私が「次回予告を観ると次がどんな話だったか分かってしまうから観ない」というのに対して、逆に「次回予告を観て一週間どんな話なのかを想像するのが面白いんじゃないですか」と言われたことがあります。


 「どちらの楽しみ方が正しい」って話じゃないですよ?
 私は、“私以外”の人間に「オマエも次回予告を観るなー!」「オリジナルアニメも観ろー!」「犯人を知らない状態で推理小説を読めー!」「アニメを観る前にWikipediaを熟読するなー!」と“私の考え”を強制するつもりはありません。それぞれ楽しみ方は違ってイイと思います。

 同時に、“私以外”の楽しみ方を「オマエも次回予告を観ろー!」「好きな漫画のアニメ化も観ろー!」「犯人を知ってから推理小説を読めー!」「Wikipediaを熟読してからアニメを観ろー!」と強制されたら猛反発するだけです。
 これでかつて「分からず屋」とか「他人と歩調を合わせられない捻くれ者」とか「他人と違うスタンスの俺かっけえアピールですか」とか言われましたけど、別に誰かに迷惑をかけているワケでもないですし、作品の楽しみ方くらい好きにやらせてくれよ。



 私が言いたいのは……
 私は、“私以外の考え”を知ることで、ようやく“私の考え”を言語化することが出来たということなのです。

 私とは全く逆の「ネタバレされたい人」の心理を考えたことで、初めて「どうしてそんなにネタバレがイヤなの?」という問いに答えられると思います。私は、何も知らない状態で作品に触れることでハラハラドキドキしたいんだ――――


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 何も知らない状態で―――
 この先の展開など分からず―――
 ハッピーエンドかバッドエンドかも分からないまま―――
 この後どうなっちゃんだろうとハラハラドキドキするのが、私にとって最高に楽しい時間なんです。

 だから「この先の展開」を教えてもらいたくはないし、ヒントになる情報は一切シャットアウトしたいのです。次回予告は観ないし、原作も(アニメが終わるまでは)読まないし、Wikipediaも熟読しませんし、犯人を知ってから読むだなんてもってのほかです。
 ドキドキ感とかハラハラ感とかモヤモヤ感を楽しみたくて、わざわざ時間を割いてまで娯楽作品に触れているのです。そこがなくなったら、わざわざ時間を割くほどの価値を見出せません。



 でも、そうでもない人がいるのです。
 「この先の展開」を知っている方が安心して作品を楽しめるじゃん、という人もいるんです。

 だから、そういう人は親切心で「ネタバレ」をしてくるんですね。
 良かれと思って。「私はこれを教えてもらったら嬉しい」から、「きっとこの人も教えてあげたら嬉しいだろうな」と―――私が「この後どうなるのか楽しみ!」と書いたら「この後はこうなるんですよ」と親切心で教えてくれる。それで私が怒ると、「なんでわざわざ教えてあげたのにこの人はこんなに怒るんだ!酷い!」となってしまう。

(関連記事:ネタバレは哀しいかな「善意」で行われる


 それは「人それぞれ違うから難しいですね」ではないんですよ。
 「人それぞれ違う」ことが分かっていれば、「何故この人はこんなことをしてくるのか」も「何故この人はこんなにも怒るのか」も分かるし、「どうすれば防げるのか」も分かります。本当にしなければならないことは、「人それぞれ違う」と認識してもらうことだし、自分も認識することです。
 今までの私は「ネタバレをして欲しい人」がいるということすら認識していなかったので、「なんでこの人はこんな酷いことをしてくるんだろう」と思っていました。それでは防ぎようもないですよね。



 これから先、「どうしてそんなにネタバレがイヤなの?」的な質問をされた際には、「世の中には先の展開を知っていることで安心して作品を楽しめる人がいるのは分かっているけど、自分は逆に先の展開を何も知らない状態でハラハラドキドキするのが大好きだから、先の展開を知っちゃうともう観る気がなくなるのです」と答えることにします。
 「だって、つまんなくなるじゃん」に比べると100万倍くらい説得力のある答え!

| ひび雑記 | 17:54 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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