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姫騎士とキャンピングカー 作者:三木なずな

姫騎士と便所飯

 村はずれの空き地、キャンピングカーの運転席。
 朝日の木漏れ日の中、直人はハンドルを握って、全周囲モニターを使って駐車していた。
 前後左右につけられた複数のカメラで、画面に車の周りの景色を全てナビに写しだしステムは、最新技術なのにファミコン時代のゲームの様な感覚を持たせるものだ。

「よし」

 車を予定した木陰に止めて、「変形」のスイッチを押して、後ろのドアを開かせる。
 縁側がゆっくりを開いた。
 直人は運転席から和室を通って縁側に向かう。
 そこに、まだ泥がついてる野菜が大量に積まれていた。
 ついさっき畑にいって積んできた、取れたての野菜だ。

「さて、下ろすか」
「オゴオゴ」

 直人が腕まくりしていると、そこに糸目のおばあちゃんオークとミミがやってきた。
 おばあちゃんオークが何かをいって、ミミが通訳する。

「ありがとう、それはこっちがやりますよ。だって」
「いいんですか?」
「オゴォ」
「まだまだ若い者にはまけませんよ。だって」

 おばあちゃんオークはそう言って、野菜を運び出した。
 山のような野菜を風呂敷の様な布にくるんで、まとめて持ち上げたのだ。
 さすがオークだけあって、おばあちゃんでも力持ちだ、と直人は思った。

「はは、ひょろいおれなんかよりもずっと力持ちだ」
「マスターはデスクワークばかりしてましたから」

 斜め後ろの秘書ポジションからパトリシアが言った。

「ああ、そうだ。そのかわり月の残業100時間でも三日三晩寝ずにしごとするのも余裕でできるぞ」
「さすがマスターです」

 おっとり口調で持ち上げてくれる台詞は聞いていて気持ちがいい。

「元社畜は伊達じゃない」
「うふふ」

 直人は縁側に座り、体を後ろに傾けた。

「パトリシア、オッパイ」
「はい。どうぞ、マスター」

 パトリシアはうふふと笑って、直人を抱きとめた。
 彼女の柔らかいオッパイをソファーに見立てて、縁側で寝そべった。
 風が吹いてきて、風鈴が鳴った。
 その風がとても気持ち良かった。
 ふと、思い出した様に直人が聞く。

「そういえばバッテリーは?」
「おばあさんの野菜を運んだので大分使ってしまいました、夜はエアコン使えないかも知れません」
「そっか」
「昨晩と同じ気温でしたら、縁側を開放して風に吹かれるものいいかもしれません」
「そっか」
「エアコン以外は使えるように管理します」
「そっか」

 パトリシアの言葉に適当に返事をして、直人はのんびりした。
 あえてキャンピングカーを日陰に止めていることもあって、風は涼しかった。
 たまに涼しすぎてちょっと寒くなるときがあるけど、オッパイの谷間で受け止めてくれたパトリシアの体が温かっ他。。
 前は寒いけど、後ろは温かい。
 絶好の昼寝コンディションだ。
 生まれてくる眠気に、直人は身を任せた。

 ふと、違う風を感じて、直人は目を覚ました。
 目を開けると、パトリシアがうちわで扇いでくれてるのが見えた。
 木と葉でできた、手作りのうちわだ。

「それ、どうしたんだ?」
「はい、さきほどおばあさんが来て、これを渡してくれました。お昼になったら暑くなるから、と」
「昼か。今何時?」
「12時59分です」
「普段なら昼休み終了の時間だな。昼休みなんて実質なかったけど」
「そうですね」

 そう言って、また言葉がなくなる。
 首筋がちょっと汗ばむ真昼の陽気に、パトリシアのうちわの風が心地よかった。
 直人はまたうとうと寝入ってしまった。

 なんだか腹が重かった。
 なんだろうと思って目を開けて下を見ると、そこにミミがいて、彼の腹を枕にして寝ている姿が見えた。
 なんとなく頭を撫でてやった。
 それで、起こしてしまった。

「おはよう」
「はよ……」

 寝ぼけたまま、ミミは目をこすった。
 体を起こしたハーフエルフの少女に聞く。

「おばあちゃんの所に行ってたんじゃないのか」
「うん、行ってたー。それでね、おばあちゃんがこれくれたのー」

 ミミはそう言って、縁側の隅っこにおかれているスイカを指さした。
 ソフトボールより一回り大きいだけの、スイカにしては小ぶりなものだ。

「スイカか、春なのにあるんだな」

 直人のイメージだとスイカは夏の果物である。

「おばあちゃんいってた、春だから小さいのしかなくてごめんなさいって。夏になったら大きいのもあるからって」
「なるほど、春スイカ、みたいな品種があるのかな」

 直人はオッパイを枕にしたまま、考えた。

「スイカは冷やした方がうまいから、冷やすか」
「じゃあ、冷蔵庫に入れようよ」

 ミミがそう提案した。
 ちゃんとした発音で、しっかり冷蔵庫というものを覚えたという発音だ。
 バイリンガルだからそのへん強いのかな? と直人は思った。

「いや」

 直人は少し考えて、言った。

「ミミ、おばあちゃんにこの辺に川があるかどうか聞いてきてくれるか?」
「川? それをきいてどーするの?」
「スイカはな、川で冷やした方が美味いんだぞー」
「そうなの?」
「恐()のしっぽをこのまえ焼いただろ、あれと同じ、スイカは川で冷やした方が一番うまいんだ」
「そっか! わかった聞いて来る」

 ミミが走って、村の中に消えていく。
 三分もしないうちに、長っ鼻のオークと一緒に戻ってきた。
 どうしたんだろう、と直人は思った。

「おじいちゃんが川にもってってくれるって、ついでに、だって」
「オゴッ」

 長っ鼻のオークは釣り竿を持っている。つりにいくついでに、という事のようだ。

「それとね、おにいちゃんのこと、わかってる、っていってるよ。何を分かってるの?」
「あはは、なんだろうなー」

 直人はオークと笑い合った。
 言葉はまったく分からないけど、なんとなく通じ合った気がする。
 長っ鼻のおじいちゃんオークは小玉スイカを受け取って、脇の下に抱えて去って行った。

「さて、もうちょっと寝るかな」
おばちゃん(、、、、、)がよんでるからいってくるね」

 ミミがそういって、風のようにかけていった。
 直人はもうしばらくうたた寝した。
 不思議な事に、いくら寝てもまた寝れる。
 昔は、たまの日曜日に寝溜めしようとするとかえって疲れて気持ち悪くなったりするのだが、まったくそんな事にはならなかった。
 のんびりとしてて、いくらでも気持ち良く寝れる感じだ。

 次に起きたときは夕方になっていた。
 目を開けた縁側の先に、今度はおばあちゃんオークの姿が見えた。

「どうしたんですか?」

 直人は敬語で聞いた。相手がおばあちゃんだと知ってから、なんとなくそうなったのだ。

「オゴオゴ」
「えっと……」
「なんと言ってるんでしょう」
「わからないな……」

 困る直人とパトリシア。
 辺りを見回す、ミミはいない。

「オゴ」

 困る二人に、おばあちゃんオークが持っていた布の袋をだしてきた。
 袋の中から様々なものを出して、直人に手渡した。
 昨日ミミに渡した干し芋や、様々な果物をくれた。

「ああ、おやつか」

 なんとなく分かった直人、これはおやつなんだ。
 田舎に帰ったとき、食べきれないくらいのおやつを出してくれたおばあちゃんの事を思い出した。
 今もそうだ、直人の目の前に、食べきれない程のお菓子が現れたのだ!
 おばあちゃんという人種はどこも一緒なんだな、と直人は思った。
 直人は数時間ぶりにパトリシアのオッパイから体を起こし、足を縁側から下ろして、おばあちゃんに深々と頭を下げた。

「ありがとうございます」
「オゴォ」

 ミミはいなかった、でもなんとなく分かった。
 直人の耳には、「足りなかったら言ってね」と言われた様に聞こえた。
 足りても次から次へと持ってくるおばあちゃん的な台詞に、直人はもう一度、深々と頭を下げた。
 帰るおばあちゃんの背中を見送る。

「何かお返しに作りたいな」
「焼きブドウはどうでしょう」
「そうだな、手伝ってパトリシア」
「はい!」

 彼はパトリシアと共に部屋にもどり、キッチンで今し方もらった果物をオーブレンジで焼いて、それをおばあちゃんオークの所に届けた。
 当然、おばあちゃんからその三倍くらいの料理をお返しもらったのは、言うまでもないことだった。
 こうして、彼がオークの村でのんびりと一日を過ごしたが。

 次々とおとずれるオークに怯えた姫騎士は一日中トイレに閉じこもり、ご飯もそこで食べていた。
波状攻撃をしかけてくるオークの皆さん、それに怯えて隠れてしまう姫騎士……そんな話。
それよりも、なんでおばあちゃんって人種は孫が食べきれないほどのお菓子を次から次へと出してくるんだろうね。
わたし台湾人ですけど、台湾でも同じなんですよねその辺は。
おばあちゃんっていうのは世界共通、異世界にわたっても共通なんだなと書いてておもいました。

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スローライフ小説の巨匠、「四コマ小説」というジャンルを開拓した『GJ部』の新木伸先生がなろうで連載を始めました。

『異世界Cマート繁盛記』
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作者のコントロールから外れたおバカキャラほど可愛いものはありません。
バカエルフがこの先どこまで「化ける」のか楽しみです♪

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