▼J1無印ベスト11
4月23日に日本サッカー協会から1つのリリースが発表された。曰く、「5月12日から2日間に渡って、日本代表のミニキャンプを行う」。
これはヴァイッド・ハリルホジッチ監督たっての希望ということで、霜田正浩技術委員長も「国内の新しい選手を呼ぶ」と明言している。今回はこのタイミングで、J1リーグの中から同キャンプへ11人の選手を推薦してみたいと思う。
選考基準の大前提は『国際Aマッチの出場経験がない選手』。また、前回のチュニジア戦とウズベキスタン戦のバックアップメンバーに選出されたメンバーは今回の推薦から除外しており、言わば『国際Aマッチの出場経験がないJ1ベストイレブン』といった形の選手たちを列挙させてもらった。なお、この11人でゲームをすることは想定していないため、ポジションバランスの是非はご容赦頂きたい。
GK 村山智彦(松本山雅)
セーブ率はここまで権田修一(FC東京)に次いでリーグ2位の74%。守備に回る時間の長いチームの中で、1試合に2、3回のファインセーブはデフォルトになりつつある。3年前までは最近流行りの"佐川男子"だった経歴も。一昨年は山岸範宏(山形)に先んじる形でゴールも記録している。
DF 丹羽竜平(サガン鳥栖)
鳥栖のJ1昇格後は、3シーズン続けてリーグ戦33試合にスタメン出場。インターセプト数は今シーズンのJ1日本人トップであり、ライン上で見せる間一髪のクリアにも定評がある。チームの中では"隠れイジり役"という一面もあるとか。
DF 丹羽大輝(ガンバ大阪)
自陣空中戦数でもリーグ8位。きっちり守ってカウンターという形も少なくないG大阪の中で不動のCBに成長しており、ミックスゾーンのコメントからもうかがえる超絶ポジティブシンキングで最終ラインを引き締める。
DF 高木利弥(モンテディオ山形)
第6節の松本戦でスタメンに抜擢されると、以降は定位置を確保したレフティのサイドアタッカー。まだまだ粗さはあるものの、清水戦のラスト15分間には大きな可能性を感じた。父親は長崎の監督を務める高木琢也氏。今年の春に神奈川大学を卒業したばかりのルーキー。
MF 関根貴大(浦和レッズ)
第7節にして昨シーズンのリーグ戦スタメン数を塗り替えており、"ほぼフル出場"を続けて首位を走るチームの中で右ウイングバックの定位置をつかみつつある。埼スタのヒーローインタビューでもマイペースを貫いてしまうメンタル面も魅力的。
MF 岩間雄大(松本山雅)
地域リーグやJFLも経験した叩き上げ系ボランチ。自身のやれることを最大限に把握した上で、厳しいチェックやスペースを埋める働きはJ1でも十分に通用している。仙台戦時には試合前にもかかわらず、解説を務めた東京Vジュニアユースの先輩・玉乃淳氏のところへ挨拶に訪れる律儀な一面も。
MF 永木亮太(湘南ベルマーレ)
"ノータイムフットボール"を掲げる湘南の中でも絶対に欠かせないコントロールタワー。90分間走り続けた山形戦のハイパフォーマンスは圧巻の一言だった。2年前のJ1在籍時とは存在感が格段に違う。
MF 藤田直之(サガン鳥栖)
もはやリーグの名物として認知されたロングスローが目立つ中でキック精度も高く、今シーズンはここまで6アシストの内、5アシストを"足"で記録するなど絶好調をキープ。大学時代はリーグ得点王にも輝いた攻撃力も大きな魅力。
MF 武富孝介(柏レイソル)
持ち前のセンスに加え、熊本と湘南でのJ2武者修行を経て、たくましさを身に着けた。川崎F戦やACLの全北戦ではマーカーが何人いても関係ないゴラッソを披露。達磨レイソルで不動の地位を築いている。
MF 柏好文(サンフレッチェ広島)
クロス成功率とドリブル成功率は共にリーグトップ5に入る。松本戦で決めたゴールのように、フィニッシュへの意識も高いドリブラーは、昨シーズンから綺麗なゴールがなぜか取り消されがちな一面も。自身も代表入りへの意欲が高まってきている。
FW 浅野拓磨(サンフレッチェ広島)
とうとうリーグ戦初ゴールを決めた、U-22日本代表にも選出されているスピードスター。広島ではジョーカー起用が多いが、清水戦や横浜FM戦以降はカウンター時のドリブルが"無双状態"に入り、仙台戦でも完璧なゴールをマーク。大ブレイクも目前か。
前回の"3月シリーズ"に臨んだメンバーは、日本サッカー協会サイドが推薦した選手が大半を占めていたはずであり、ハリルホジッチ監督主導でのメンバー選出は実質今回が初めてとなる。精力的に国内を視察して回った指揮官の"目利き"には大いに期待できるはずだ。清水エスパルスユースやJFAアカデミー福島からの選出はさすがにないかもしれないが、幅広い選手選考が為されることを願いたいし、これから数多くの日本人選手に代表選出への可能性があると信じたい。
▼"彼"を思い出すとき
そういう選考を期待する上で、個人的に思い出すエピソードがある。
2008年3月16日のJFL開幕戦。場所は栃木県グリーンスタジアム。その男はアウェイチームであるFC琉球の守護神としてゴールマウスに立っていた。現在は解説者として活躍する佐藤悠介氏に3失点目となる直接FKを叩き込まれた男は直後、自らが指示して作った壁の選手と軽く口論になっていたように記憶している。試合は1-3で完敗。肝心のプレー面ではさしたる印象を残すことなく、J2昇格を目指すホームチームの引き立て役として、屈辱の日本デビューを強いられた彼は1シーズンでチームを退団。私もかろうじて記憶の片隅に"口論"していた姿を留めている程度だった。
彼に再会したのはTVの画面上だった。2010年6月18日。その男は世界最高と称される祭典でゴールマウスに立っていた。対戦相手のスタメンに名前を連ねていたのはフランク・ランパードであり、スティーヴン・ジェラードであり、ウェイン・ルーニー。スターが居並ぶサッカーの母国を無失点に抑えた男は試合後、誇らしげにチームメイトと抱擁を交わしていた。"口論"からわずかに2年。舞台は栃木から南アフリカに変わり、立場は"外国人助っ人"から代表選手へと変わっていたのだ。
彼が世界を熱狂に誘ったのは2014年6月30日。自身2度目となるワールドカップはグループステージを2位で堂々通過し、ラウンド16で優勝候補と目されていたドイツと対峙する。世界最高のGKとの呼び声も高いマヌエル・ノイアーと互角に渡り合い、ファインセーブに次ぐファインセーブを披露して試合は延長戦へ。最後は結果的に王国でトロフィーを掲げたゲルマン魂に屈したが、その試合の"Man of the Match"には彼が選ばれる。栃木で屈辱を味わった男はその6年後、ワールドチャンピオンを苦しめた守護神として世界のフットボールファンの知る所となった。
ご存知の方も多いかもしれない。日出ずる国の3部リーグから世界最高峰のステージへと羽ばたいた男の名はライス・エンボリ。彼が忠誠を誓ったナショナルチームはアルジェリア代表。そしてそのチームを2011年から3年間に渡って指揮官として率い、沖縄の風を知る男を正守護神に任命してドイツを土壇場まで追い詰めたのは、言うまでもなくヴァイッド・ハリルホジッチである。
土屋 雅史(つちや・まさし)
1979年生まれ、群馬県出身。群馬県立高崎高校3年で全国高校総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出される。早稲田大学法学部卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スポーツへ入社。同社の看板番組「WORLD SOCCER NEWS 『Foot!』」のスタッフを経て、現在はJリーグ中継プロデューサーを務める。近著に『メッシはマラドーナを超えられるか』(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。