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2006.02.20 UPDATE

土信田 当初は、一体成形で、出したらすぐ遊べる完成品で作った方が楽かなと思っていました。しかし、例えば先頭車1両だけで完結する商品ならこれでいいのですが、Nゲージと並べて走らせたり、何両かつなげて編成ができるようにする必要があるわけですよね。

――そうですね。バリエーションが必要だ。

 となると、先頭車と中間車の作り分けや、同じ中間車でもパンタグラフの付いている車両とない車両の作り分けなどが、どうしても必要になってきます。そうすると、完成品にしてしまうとその分、同じ形式の車両でもバリエーションを増やさないといけなくなる。

――ひどく効率が悪いですね。

土信田 電車というのは基本的には同じ車体で、一部の装備が違うというパターンが多いので、違う部分だけを作る時に選べるパズル方式にしておけば、製品の種類を少なくし、コストも低めに抑えられる。しかもバリエーションも増やせるということで、プラモデル方式にしたわけです。

――パッケージの中に、余分にパーツが入っていて、ユーザーが自分の好きなバリエーションを作り分けられるようになっていますね。それに、マニアとしては全バリエーションが欲しくなるから、同じ車両を何台も買いたくなる。おまけに開封してみるまで何が出てくるかも分からない…マニア心に応えつつ、コストを抑え、数を売る。オニのような商品戦略(笑)。

――作ってみて驚いたのですが、これ、本当に組みやすくできていますね。生産は中国ですか?

土信田 そうです。でもスタート時、プラモデルを中国で作るとのは意外と冒険だったんですよ。キャラクター物の組立式の塩ビの人形とかいうのは多々あったんですけど。

 プラモデルでは、パーツ同士にそれなりの精度がないと、組み立てたらガタついてしまう。屋根と車体に隙間が空いたりしたら興ざめもいいところですし、玩具としても持った途端にバラバラになりかねない。

 そこで、金型を作る前の段階、つまり3D CADのデータは国内で作って、中国の工場にはそのデータを取り込んで金型を彫ってもらうようにしました。

――普通は、図面(2D CAD)や原型を向こうに渡して、向こうで金型を作ってもらうわけですね。金型そのものを日本国内で作ることも考えられました?

土信田 以前は、その方法をとっていましたが、さすがに中国も金型を起こす技術は上がってきていますから。Bトレインショーティーはスタート時から中国で金型を作っています。

▼「金型にやさしい」ラインナップが商売のカギ

――この手の製品は、コストの中で金型が占める割合が一番大きいわけですよね。

土信田 もちろんそうです。Bトレインショーティーの場合は、約3割ぐらい…ですかね。で、ここからラインナップの話に飛ぶんですが、通勤型の車両は使い回しがきくんです。同じ山手線で使っている車両が色を塗り替えて、ほかの線で走っているとか、大手私鉄さんで使い終わった車両が、地方の私鉄さんで走っているとか。

――あー、山手線で使われた205系が、いま宮城の仙石線で色を変えて走っているとか。

土信田 西武鉄道の101系が総武流山鉄道にいるとか(笑)。通勤型の車両の方が使い回しがきくので金型に優しい(同じ金型でバリエーションを増やせる)、というのも、Bトレインのラインナップの隠れた理由です。全然、隠れていないか(笑)。

――それでは、「懐かしい」と思う車両が多いのも…?

土信田:新しい車両よりは古い車両の方がバリエーションが多いですからね。

――同じ車両でも、歴史がある方がいろいろなバリエーションが増えますからね。しかし、ラインナップの中に時々1つだけ妙なものが混じりますよね。あれの狙いは何ですか?

土信田 あれはアクセントとして。同じような車両ばかりだとやっぱり飽きるでしょうから。金型に優しい商品だけだと、全部同じ形になっちゃいますからね。たまに変わった車両を、ぽろりぽろりと加えています。

▼商品が腐らない、それが鉄道市場のいいところ

――トータルでは年に100万個以上売れているというお話でしたが、1シリーズだとどのぐらいですか?

土信田:レギュラーシリーズで、毎回10万個~20万個ぐらいの出荷になりますね。1車種で5000個~1万個を売っている計算になります。

――鉄道模型の市場規模は、今どのぐらいあるのでしょう?

土信田 なかなか正確なデータが見つからなくて、詳しくは分からないのですが、だいたい140億~150億円だと言われています。

――バンダイという会社としては小さいかもしれませんが、鉄道模型業界にとっては、いきなり数パーセントのシェアを付け足したイメージですか。

土信田 とりあえずそういうことになりますか。しかも都合のいいことに、鉄道って素材は腐らないんですよ。プラモやゲーム、フィギュアなどのキャラクター商品と違って。

――キャラクター商品は、テレビなどが終わると、そのまま売れなくなってくるけれど、鉄道は車両そのものの寿命が長いですからね。

土信田 走らなくなった車両にもファンがいますしね。例えば山手線の電車を出して1年ぐらいかけて売っていく。市場からなくなると、また出して地道に売り抜く。要するに、大ヒットはしない。けれど、いつまででも売れるんですよ。

――そのあたりは、鉄道模型を参考にされたのですか?

土信田 鉄道模型の場合はもっと極端です。1回の生産でズドーンと作って、何年間かは生産しないというやり方だと聞いています。

――戦車や船のプラモデルもそうですね。多少の作り置きをしておいて、ちょろちょろっと流すと。

土信田 逆に、腐らない反面、ユーザーに合わせて形を変えたりもできませんけどね。鉄道、船、車などのスケールモデルは、3年後のユーザーにも、5年後のユーザーにも同じ商品を売っていくわけです。そういう部分では、ユーザーがどんどん代替わりをしていく市場とも言えます。

▼鉄道会社とのコラボで、バンダイの存在感も上げる

土信田 もう1つは、鉄道会社に売ってもらうことで、アピール効果が期待できるんです。

――私鉄さんと組んで売っている、Bトレインのコラボレーション商品ですね(Part2参照)。

土信田 私鉄さんからの発注でうちがOEMで供給するという形なので、バンダイという名前は出てこないんですけど、「Bトレインショーティー」の名前で中吊り広告される。あれを単純に枠として広告の買い取りをしたら何百万円相当ですものね。そこを私鉄さんの側で宣伝をしてくれるのと同じわけですから、その効果というのは大きいですよ。

――なるほど。他社さんでもプラレールやチョロQのコラボレーション商品がありましたね。

土信田 これまでの弊社には、そういう例はほとんどありませんでした。電車に乗っている一般の方に「なんかバンダイの商品が出ているな」というのが目に見えるようになってきたことは大きいです。

▼事業としての採算と、個人の「やりがい」

――事業としてはどうなんでしょう。すでに単年度黒字ぐらいのところまでは行っている?

土信田 そうですね。事業としてはほぼトントンくらいです。

――金型の使い回し効果も効いて来ましたか。

土信田 実は、まだそこの効果が実感できるほどではないんですよ。今のところは利益はカツカツの商品なんですけれども、それこそ5年後、10年後には、金型代などがかからない商品になりますので、そのときには利益率は全然違ってきます。それを重ねていくと普通の玩具商品よりも利益率が高くなるイメージです。

――償却が終わればあとは作るだけ儲かる。キャラクター商品とは真逆のモデルなんですね。さて、最後にひとつよろしいでしょうか。お聞きしにくいことなんですが。

土信田 どうぞ。

――年間100万個、という数字は、玩具メーカーのバンダイさんの事業としては、どう評価される数なのでしょうか?

土信田 それはですね。実は、玩具の1キャラクターとして考えたら、この数字は大したことはないんです。Bトレインはシリーズ全体ですが、弊社には、1つの商品で100万個ぐらいいく商品はありますから。たとえばカプセル玩具、菓子玩具では1度で30万個以上出ていく商品もたくさんあります。

――なるほど。しかし、従来とは違う形のビジネスモデルを作り、バンダイの存在感を高め、将来の利益率が高まる、という点で…。

土信田 続けていくだけの理由を、ビジネスモデルとしては提示できている、そう思います。

――この商品で、これこれのことを実現したい、とか、そういう目標ってありますか?

土信田 そうですね、申し上げたとおり、バンダイの社史に残るような商品かと言われたら、残念ながらBトレインよりももっと売れて、会社が儲かり、人々の記憶に残るものは、うちにはたくさんありますからね。今はまだダメですね。個人的なことでもいいですか?

――ぜひぜひ。

土信田 鉄道模型の歴史書、みたいなものがあったとしますよね。別にどなたか個人の記憶の中でもいいんですが。その中に残ることができて、「Bトレインショーティ」って商品もあったな…、なんて記憶してもらえたら、自分にとってはすごく幸せなことだな。そんなことを思っています。


小口 覺(おぐち・さとる)
1969年兵庫県生まれ。情報誌からコミック誌、アウトドア雑誌にまで原稿を書き散らすライターであり、編集プロダクション「ヌル」代表。裏のテーマは最新技術と魔術。海城高校時代は鉄道研究会に所属。

(聞き手:小口 覺、写真:大槻 純一)


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土信田 一善(としだ・かずよし)
株式会社バンダイ 新規事業室 企画開発第一チーム リーダー

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Bトレインショーティ

リアルでありながらかわいい、鉄道コレクション玩具。基本は何が出てくるか分からないブラインドボックスの中に1両入っていて、お値段は400円(税別)。Nゲージと同じ、150分の1スケール(線路の幅は9mm)で精細な出来でありながら、長さだけが約半分の60mmにカットされている。このため、例えばドアが4枚の車両は2枚になる。

車両は組み立て式。接着剤を使わず、子供にも作ることができる。また、別売りの動力ユニットや金属製の台車を組み込めば、Nゲージのレールの上をそのまま走らせることも可能。これまで約600種類が発売され、2006年3月期までの累計販売数は500万個(車両数)を越える見込み。

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