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 解凍しても果肉が崩れにくく、旬の味を保つ冷凍ミカンの製造に愛媛県西予市明浜町渡江(とのえ)地区の住民が地域ぐるみで取り組んでいる。魚の鮮度を保つ特殊な冷凍技術を使い、生に近い食感が楽しめるという。4月下旬に発売し、ブランド商品に育てることをめざす。

 宇和海に面した渡江地区は柑橘類(かんきつるい)の生産が盛んだ。しかし、八幡浜市の「真穴みかん」などブランド力がある産品に比べると、西予市の担当者は「市場での産地間競争は劣勢だった」という。高齢化と後継者不足にも悩んでいた。

 冷凍ミカンの商品化に取り組むのは、ミカン農家の浜木由規雄さん(61)ら渡江地区全員の約200人。

 着目したのは、隣町の西予市三瓶町で実用化されていた魚の急速冷凍技術。マイナス30度前後の水溶液につけて急速冷凍すると細胞が壊れにくく、解凍しても身が崩れにくい。浜木さんは「ミカンに使えば生のようなおいしさを味わえるはずだ」と思い立った。

 冷凍機器を借りて2013年11月ごろから試作に取り組んだ。試作品を東京の築地場外市場に持ち込み、消費者に試食してもらった。「味はいい」と好評で、手応えを感じた。

 住民たちは昨年1月に事業を進める地域おこしのグループ「渡江から一歩を踏み出す会」をつくり、浜木さんが会長になった。

 浜木さんらの動きに西予市も呼応した。総務省の自立活性化推進事業の交付金1千万円で冷凍機器を購入し、会に貸し出した。会は、地区の農家12戸が収穫したミカン約3トンを使い、お年寄りら約20人も皮むきなどを手伝って商品化にこぎつけた。

 4月29日に西予市内の「道の駅どんぶり館」と「あけはまシーサイドサンパーク」で販売を始めた。