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与党も「外相更迭論」

鈴置:保守系紙が保守政権に「無能」というレッテルを貼るのは異例です。政権との全面戦争を意味するからです。

 政権末期ならともかく、朴槿恵大統領の任期はまだ2年半以上残っているのです。朴槿恵外交への苛立ちがいかに大きいか分かります。

 朝鮮日報だけではありません。ほかの新聞も「外交敗北」などの単語を日常的に使うようになりました。

 社説だけではなく、シニア記者や社外の識者のコラム、果ては座談会まで、大手紙だけをチェックしても毎日どこかに必ず「失敗続きの外交」を叩く記事に出くわす感じです。

 メディアでここまで「外交敗北論」が盛り上がると、与党、セヌリ党も放っておけなくなりました。尹炳世(ユン・ビョンセ)外相に対し、与党重鎮が辞任する考えはないか、と問い質すまでになりました。

 尹炳世外相や外交部スポークスマンは、記者会見やシンポジウムで「敗北」を追及されては「失策していない」と弁解する羽目に陥っています。それに同意する韓国人はほとんどいないようですけれど。

素人は外交に口を出すな

ついこの前まで、韓国紙は「米中両大国と過去最高の関係を結び、それをテコに日本を孤立させている」と朴槿恵外交を褒め讃えていました。豹変ぶりというか、しょげぶりには驚きます。

鈴置:3月30日の尹炳世外相の発言が引き金になりました。尹炳世外相は「米中の間に挟まれた韓国の境遇は厄介なことではなく、双方からラブコールを受ける祝福として受け止めるべきだ」と語ったのです。

 韓国は二股外交の結果、終末高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)など多くの問題で、米中板挟みに陥りました(「米中星取表」参照)。

米中星取表〜「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか
(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年5月6日現在)
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権
の行使容認
2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の
MDへの参加
中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への
THAAD配備
青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習
の中断
中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの
正式参加(注1)
正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの
反米宣言支持
2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの
加盟 (注2)
米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。
(注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。
(注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

 当然、これに対しては韓国メディアも不安の声を上げていました。というのに外相が「板挟み」ではなく「米中双方からのラブコールだ」と強弁したのです。

 また「外交の素人が余計な口を出すな」的な言い方もしたため、メディアの外交批判に火が付いたのです。


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