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2015年1月15日の夕方、それまでスイス中央銀行が対ユーロの無制限為替介入をしていたのを突然撤廃いたしました(スイスフランショック)。それによって、日本でもユーロ/スイスフランのFX取引、FXオプション取引を行っていた多数の顧客に非常に多額な損失が発生しています。平成21年の金融商品取引業等に関する内閣府令(以下「金商業府令」という)改正により、FX取引ではロスカットルールの設定及び整備が義務付けられました。そして、ロスカットルールによれば、概ね証拠金の半分程度の損失で抑えられるはずであるにもかかわらず、証拠金の数倍を超える大きな損失が発生しています。 |
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1 はじめに
金融庁は,ロスカットやスリッページ,約定拒否等に対する考え方を公表しています。その中には,今般のスイスフラン騒動について考察する際にも有用なものが含まれていますので,ここで一部をご紹介いたします(なお,下線は,読者の便宜のために当法律事務所で付加したものです)。
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| ガイドライン Ⅳ-3-3-2 勧誘・説明態勢 |
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(3)店頭金融先物取引業者の説明責任に係る留意事項
⑦ ロスカット取引
通貨関連店頭デリバティブ取引等を行う場合には、ロスカット取引(金商業等府令第123 条第1項第21 号の2に規定する取引をいう。以下同じ。)に関する取決めが設けられていること及びその内容について、適切な説明を行っているか。また、ロスカット取引が予定どおり行われなかった場合の損失のおそれ等について、適切な説明を行っているか。
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| 寄せられたコメントの概要 | 金融庁の考え方 |
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ロスカットが予定どおりに行われなかった頻度やその程度を、スリッページの頻度及び程度と併せて、具体的かつ詳細に摘示・説明されているか、顧客に誤解を生じさせないように記載・説明されているかという観点から監督をすることを強調して記載するべきである。
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業者は、ご指摘の点を含め、顧客に誤解を生じさせないような説明や表示を行うことが求められるものと考えられます。こうした観点から、今回の改正においては、「ロスカット取引が予定どおり行われなかった場合の損失のおそれ等について、適切な説明を行っているか」、「顧客が注文時に指定したレートと実際に約定するレートとの相違(スリッページ)が生じ、広告等で表示するよりも高いスプレッドで取引を行うこととなるおそれ」といった点を、監督上の着眼点として明確化しています。 |
| ガイドライン Ⅳ-3-3-4 |
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(4)ロスカット取引に係る留意事項
① 顧客の損失が、顧客が預託する証拠金を上回ることがないように、価格変動リスクや流動性リスク等を勘案してロスカット取引を実行する水準を定めているか。
② ロスカット取引に関する取決めを明確に定めた社内規程等を策定し、顧客との契約に反映しているか。
③ 取引時間中の各時点における顧客のポジションを適切に把握し、上記①の水準に抵触した場合には、例外なくロスカット取引を実行しているか。
④ ロスカット取引を実行した状況を、定期的に又は必要に応じて随時に、取締役会等に報告しているか。
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| 寄せられたコメントの概要 | 金融庁の考え方 |
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1998年10月の米LCTM破綻、2001年の9.11テロ、2007年8月のサブプライムローン問題、2008年10月の米大手金融保険企業の経営危機等、様々な理由からロスカット取引を実行できなかったケースが散見される。この場合、市場内における特有の事情を理由とするロスカット不能であっても、業者側がその責任を果たしていないとみなされるのか。また、上記のケースでは、ロスカット不能に陥った事例として、特に南アフリカランドやトルコリラといった高金利低流動性通貨が目立つが、これらの通貨は一部の業者により、高い金利差を宣伝して盛んに勧誘されていたものである。市場の動向によっては、これらの通貨ペアが再びロスカット不能に陥ることが十分に予想されるが、こうした可能性に対する取引規制並びに業者側の勧誘体制に関する当局の見解を確認したい。 |
個別事例ごとに実態に即して実質的に判断されるべきものですが、相場急変時等においてロスカット取引が想定通りに約定しないことをもって、直ちに、業者の責任が問われるものではないと考えられます。
一方、業者においては、そうした場合でも顧客の証拠金を上回る損失が発生しないようにロスカットルールを設定することを含め、ロスカット取引を行うために十分な管理体制を整備することが必要と考えられます。
なお、ロスカット取引が機能しない場合も想定した規制として、本年5月29日に証拠金率規制の導入にかかる内閣府令改正案を公表しております。
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| 寄せられたコメントの概要 | 金融庁の考え方 |
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FX 取引の約定に関して、以下のような問題事例があるので、適正に対処してほしい。
・注文時に数秒の処理時間を要し、意に反したレートで約定(仮に判定の難しい場合又は時間を要する際は、注文を失効させるべきである)。
・通信エラーなどの名目で約定を拒否。色々な名目で約定拒否が行えるので規制が必要である(例えば、業者に不利な約定がなされそうな場合にあからさまに約定を拒否すると問題があるので、通信エラーという名目で約定を拒否する。既に発注済みなので「通信エラー」や「インターバンクからのレート配信が停止しているため」等の理由で約定拒否となることはありえない)。
・逆指値等の予約注文を発注済みにも関わらず無効やキャンセル(失効)とする。逆指値は、投資家にとって損失を抑えるための重要な注文であり、約定拒否は許されるべきではない。
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合理的な理由なく約定を拒否する等の本改正の潜脱的な行為に対しては、金融庁として厳正に対処してまいります。
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| 【 金融取引被害の実態と解決方法 】 | |
| ◆金融取引被害の実態と解決方法 | ◆金融取引被害の解決方法 |
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