軍艦島 年度内に保存策 長崎市 費用や技術に課題も
ユネスコの諮問機関による世界文化遺産への登録勧告で、保存計画の必要性を指摘された長崎市の端島炭坑(軍艦島)は、「廃虚」として人気を集め、風化も著しい。市は本年度中に具体的な保存策を決める予定で、米国訪問中の田上富久市長は4日、報道陣に「保存の問題、活用の問題に努力を重ねていく」と述べた。遺産としての価値の中核をなす炭鉱施設と護岸を保存し、鉄筋コンクリートアパートについては数棟の劣化を優先的に食い止める方針だ。
明治期から本格的に採炭事業が行われた軍艦島は、1974年に閉山して無人島に。約50の炭鉱施設跡と約40棟のアパートが残る。
市は3月までの有識者による委員会で、石炭産業の礎を伝える炭鉱施設跡と島そのものを守る護岸を「本質的価値を構成する要素」とし、アパート群は「本質的価値に密接に関連する要素」と位置付けた。アパート群は大正から昭和期の建築で、産業革命遺産の価値を示す石炭産業と直接的には関係がないためだ。
だが軍艦島の名前の由来になり、ピーク時に人口密度日本一を誇ったアパート群は島の魅力。市は鉱員アパートなど7棟について保存を優先するとみられる。
課題となるのが技術が確立されていない鉄筋コンクリートの保存方法や多額の整備費。市の試算は炭鉱施設跡と護岸の整備だけで11億円。仮にアパート全てを残せば147億円が必要。市は全国のファンからの募金も検討する。
=2015/05/06付 西日本新聞朝刊=