村上さん、こんにちは。
私の父は村上さんと同じ年で、村上さんと同じようにジャズやウイスキーをこよなく愛しています。
そんな父は娘の私に、John ColtraneのNaimaという名前をつけました。と、ここで質問です。
村上さんの小説やエッセイにColtraneは出てきませんが、あまりお好きではないですか?正直、私はColtraneは得意じゃないです。だから、名前とはやれやれという感じで付き合っています。でも、村上さんに触れられないので勝手に少しだけさみしくなっています。
(ないま、女性、36歳)
そういう質問をよくいただきます。どうしてコルトレーンのことをあまり書かないのかと。コルトレーン、決してきらいじゃないですよ。よく聴いています。ただ「ちょっと生真面目すぎるんじゃないか」と思うことはときどきあります。ユーモアのセンスとか(僕はわりにそういうものが好きなんです)、洗練性とか、洒落っ気みたいなものは比較的乏しいですよね。でも「ナイマ」は文句なしに美しい曲です。
マーク・マーフィーという男性歌手が“Mark Murphy Sings” (Muse)というアルバムの中で、自分で歌詞をつけて「ナイマ」を歌っています(正確にはナイーマと発音するのかな)。リフレインの最後は“Naima, timeless name for a timeless woman.”となっています。「ナイマ、時間を超えた女性のための時間を超えた名前」、素敵な名前じゃないですか。
村上春樹拝