村上さま、こんにちは。
もう20年ぐらい前の話ですが、ギリシャに旅行したときのことです。どこか島に行きたいと思い、現地の旅行代理店を訪ねました。店のお兄さんに(せっかくなので?)「スペッツェス島に行きたいのですが」と言うと、「スペッツェス島? そんな島に行ってもドイツ人とイギリス人がビールを飲んでいるだけだ」云々で、結局お兄さんに押し切られミコノス島に行きました。ほんとうにスペッツェス島とは、そんな島だったのでしょうか? ミコノスはミコノスで楽しかったのでよかったのですが、いまでも少し残念な思いがします。
ちなみにその旅行代理店のデスクには、故中村とうようさんの名刺がはさんでありました、どうでもいい話ですが。
(808、男性、50歳、会社員)
はい、スペッツェス島はとくに何もないところです。遺跡もないし、観光名所もないし、美しいビーチもないし、飛行場もありません。でも何もないところがいいんです。観光客がかなり少ないので、とても静かでのんびりしています。だいたいはアテネに住むギリシャ人が別荘をもっていて、のんびり休暇を楽しみに来るところです。それからイギリス人がなぜかこの島を好んでいます。ヨットハーバーがあって、ヨットでやってくる人も多いです。ゆっくりするにはいいところですよ。機会があったらぜひ行ってみてください。「ドイツ人とイギリス人がビールを飲んでいるだけだ」みたいなことはありませんから。
村上春樹拝