購読中です 読者をやめる 読者になる 読者になる

名づけの理由は言えないけれど

こんにちは、村上さん。
数年前までノースカロライナに在住しており、先の三月に帰国して女の子を出産しました。その子の名前について質問、相談です。

主人が、莉杏(リアン)と名付けました。双方気に入っているのですが、問題なのは命名の理由です。音で決めた、赤ちゃんはエイリアンのようなものだから、というものなのです。この子が大きくなったときに質問されても答えられないなあと悩んでおります。

そこで、ぜひ村上さんに、この名前からイメージされることを教えていただきたいのです。ちなみに誕生日は三月三日です。よろしくお願いします。
(Rian、女性、39歳、Psychologist)

リアンと言われると、僕はフランス語の「無(rien)」を思い出してしまいます。何もないこと。なかなか意味深い名前かもしれません。ずっと昔に読んだ本なのでうろ覚えなのですが、ドビュッシーが歌劇「ペレアスとメリザンド」を書いていたとき、作業に難渋して、ちっとも作曲が進まず、「ぼくはひと夏じゅうrienを追い続けていた」みたいなことを手記に記していました。とても美しい表現だなあと感心したことを記憶しています。フランス語で言うと、いろんなものごとが美しく聞こえます。

リアン、素敵な名前じゃないですか。

村上春樹拝