私は鉄道会社で駅を作る仕事をしています。『色彩を持たない多崎つくる……』が発刊された時には、自分の愛する仕事が村上作品に取り上げられたことに驚き、感動しました。会社は違うのですが、住んでいる場所などかなり近かったのでなおさらです。
先生は多崎つくるの仕事をとても綿密に調査した上で書かれていると拝察しますが、先生がこの特殊な仕事を取り上げられたのは、この仕事にどのような想いがあったからなのでしょうか。また、駅について何かご教授いただけましたら幸いです。
ちなみに私はヤクルト・ファン、神宮ファンです。鴨川のほとりを走るのもこれまた好きです。
(しんいちろう、男性、53歳、駅を作る人)
そうですか。駅をつくっておられるんだ。僕が駅をつくる人を主人公に選んだのには、ちょっとしたわけがあります。僕には駅にかかわる思い出がひとつあったからです。でもそれについて説明すると、話がとても長くなってしまうので、割愛します。でもとにかく、僕は駅に関連する仕事をする人を主人公にして小説をひとつ書いてみたかったんです。調査取材はまったくしていません。書き上げてから事実確認を取った部分はありますが、執筆しているあいだはただ頭の中で想像して書いていました。
ヤクルト・ファンで、鴨川ランナーなんだ。いろいろと共通点がありますね。いつか鴨川沿いでお目にかかれればと思います。
村上春樹拝