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日本文学を海外で認知させる「対策」は?

村上さん、初めましてこんにちは。
私は現在、協定留学生としてカナダで留学生活を送っている日本の大学生です。こちらでは何度か日本の文化紹介をする機会があります。
外国人が持つ日本のイメージで一番多く挙げられる答えは漫画・アニメです。
日本の漫画・アニメはどこに行っても知名度が高く、外国人も日本人同様に漫画やアニメと共に育っています。
しかし、日本の現代の作家さんで有名な方といえば村上春樹さんの一人勝ちであり、その他の小説家の認知度はあまり高くないという印象を見受けます。
そこで、なぜ村上さんはご自身の作品が世界的に評価され、海外でも人気を得ているとお考えですか。日本で一定の評価を得ているため海外メディアにも取り上げられる機会が増えたということであれば、他の小説家の方々との差別化など、何か心がけていることがありましたらご回答願います。
また、今以上に多くの日本文学が海外で認知されるようになるには今後どのような対策を推し進めるべきだとお考えですか。
質問の意図としては、日本の現代文学に関しても外国人に知っていただく機会を増やし、今以上に日本の小説が世界中に出回ることを期待しているからです。
村上さんのような日本を代表する作家さんがもっと世界に進出し、一定の認知度を得られたら素敵だな、と考えております。日本の誇れる文学の文化をより多くの人に知っていただきたいです。
ぜひご本人からのご意見をお伺いしたいです。宜しくお願いいたします。
(あやかメイプル、女性、21歳、大学生)

こんにちは。今以上に多くの日本文学が海外で認知されるようになるには、今後どのような「対策」を推し進めるべきか? 

申し訳ありませんが、そういう大局的なことは僕にはまるでわかりません。どうすればいいんでしょうね? それにそういうことってそもそも、誰かが「対策を立て」て、何か手を打ったりするべきことなのでしょうか? 自分の作品の行方については結局のところ、それぞれの作家が自分の力で切り拓いていくしかないんじゃないですか? 政府が予算を組んでキャンペーンをはったとしても(たとえば「クール・ジャパンなんとか」みたいに)、アーティストの自助努力がなければ、それはただの税金の無駄遣いに終わってしまうかもしれません。芸術というのは、いうなれば、地形に沿って流れる水のようなものです。それは自然に己の水路を見つけていきます。他人が手を貸して援助をして、それでどうにかなるというものではありません。それで一時的に結果が出たとしても、長続きするものではないでしょう。僕はそう考えているのですが。

僕も今から30年以上前、(ちょうど今のあなたのように)初めて海外に出て生活したときに、日本の現代小説がほとんど知られていない実情を知り、「これはなんとかしなくちゃな」と思ったことを覚えています。だからこそ僕なりに、これまでこつこつとがんばってきたんです。自分でルートをつくり、自分で人脈を作ってきました。僕は基本的に(良くも悪くも)とても個人的な人間です。「対策」のことまではよくわかりません。すみませんが、あなたが考えてみてください。

村上春樹拝