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【社説】

習体制の行方(2) 注目したい「協商民主」

 春の全国人民代表大会(国会に相当)の期間中、本紙上海支局でもネット規制をかいくぐる手段の一つであるVPN(仮想私設網)がつながりにくくなった。親中的とは言えない香港紙の電子版も一時閲覧できなかった。

 今年初めには「中国がVPNを遮断した」との報道があった。中国はスパイ防止法を制定し、米国企業などにネットの暗号情報を開示するよう強制する「反テロ法」の審議も進めている。

 習近平国家主席が「一強多弱」と言われるほど権力を掌握したのに伴い、言論空間の引き締めが強まっているのが気がかりだ。

 教育相は「西側の価値観を伝える教材を大学に持ち込むな」と指示した。文化人や人権活動家の自由な言論への圧力も続く。

 習氏はすでに党、軍、政府の権力を握り、トップダウンによる政権運営を進めている。カリスマ的な権威を背景に、習氏は共産党の絶対的な指導による統治を強めているようにも映る。

 習氏は指導的思想「四つの全面」を打ち出した。もしも「全面的な法治」より「全面的で厳格な党管理」が優先されるのであれば、いくら欧米と違う「中国的民主」を進めると強弁しても、国際社会は中国の民主主義の将来に懸念を抱かざるをえない。

 香港行政長官選の民主化をめぐる昨年秋の「雨傘革命」=写真=の激化は、中国が国際公約した「一国二制度」がなし崩しにされかねないと、香港の若者たちが敏感に感じ取ったからであろう。

 中国が、身近な政策決定に住民が加わる「協商民主」という制度を導入しようと努力する最近の動きには注目したい。

 指導者が常に「為人民服務(人民に奉仕する)」と口にするように、中国では党や政府の一部エリートが人民のために奉仕すればよいとされ、人民による政治参加という発想は欠けていたといえる。

 民が政策決定に参加し、その政治意識が高まるなら歓迎したい。それは共産党の一党支配を危うくする可能性もあるが、大胆に「協商民主」に魂を入れられるかどうかは「中国的民主」の試金石ともなろう。(中国駐在=加藤直人)

 

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