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フィリピンのバギオはいい風が吹きます

こんにちは、村上さん。
僕は昨年の9月からフィリピンのバギオ市というところにいます。ここにある語学学校で、英語を学びながら、日本人に英語を教えています。つまり半分学生、半分教師みたいなことをしています。
バギオは首都マニラからバスで6時間半くらい北にのぼったところにあり、標高が高く、気温が涼しいことで有名です。12月のクリスマス休暇には、フィリピン各地から寒さを求めて観光客が訪れます。日本人の僕からすると、そんなフィリピン人の行動がとてもかわいらしく映ります。
僕はこのバギオという街がとても好きになりました。
小さな街なのですが、パン屋さんがたくさんあり、パン屋巡りがこっちに来てからのもっぱらの醍醐味です。またバラココーヒーというバギオ産のおいしいコーヒーが飲めます。

そしてなんといっても、バギオはいい風が吹きます。特に晴れた日の午前10時から昼3時くらいまでに吹く風が最高です。窓を開け、バラココーヒーと焼き立てのパンを囓りながら本を読んでると、どこかに飛んでいってしまいそうになるくらい幸せな気持ちになれます。

そうそう、こちらのホームレスはタレンティッドな人が多いです。ボックス型のアンプの上に座り、エレキギターを弾いている人もいれば、ハーモニカで「カントリーロード」を奏でている人もいます。特にエレキギターの音色がぶっ飛んでいます。まるで、インドの寺院から流れてくる宗教音楽のような趣を醸し出しています。なかなかディープな街ですよ。
(ココナッツ、男性、33歳、無職)

なかなか素敵そうなところですね。フィリピンにもそういう涼しいところがあるんだ。僕はなぜかまだフィリピンっていったことないんです。ところでフィリピンの英語の国名は正式にはThe Republic of the Philippinesになるんですね。定冠詞が二つもつく国名って、あまりないんじゃないのかな。どうでもいいといえばどうでもいいことですが、前からちょっと気になっていたので。

僕の小説はいろんな国の言葉に訳されていますが、タガログ語にまだ翻訳されていません。このあいだフィリピンの人に会ったので、「どうしてだろう?」と尋ねてみたんですが、「だって、ムラカミさん、フィリピンで本を読むような階層の人は、みんな英語で本を読みますから」ということでした。インドもそうなんですね。みんな英語で読んでいる。なんか不思議な気がしますが。

村上春樹拝