17歳のときに通い始めた習い事の教室で、同じく入門した女性に一目ぼれ、恋をしました。そのとき25、6歳に見えた彼女は、暫くたって僕よりも19歳も年上だということが分かりました。
20歳になって、初めて彼女にデートを申し込みました。そしてつきあうようになりました。年の差を気にし続けているのは彼女のほうだけで、僕は彼女に夢中なまま、25歳になりました。
この8年間、合コンとか友達の紹介とかで、同年代の女の子と何人かちょこっとだけ付き合ったりはしましたが(これについては彼女も知っています。ほかの女の子とも付き合いなさいと背中を押したのは彼女なのです)、そのたびに僕には彼女じゃないとダメなんだと改めて思い知らされるばかりでした。
法令線が目立ってきても、白髪が出現しても、彼女は彼女です。年をとっていく彼女を、ありのまま、一番そばで見ていたい。
結婚しようと思います。でも、親や友人たちは、あまり歓迎してくれません。
出会ったときすでに、彼女は病気で子供を生む機能を失っていたということも、周囲の反対の理由にはあると思います。
彼女も、彼女の家族も、僕に対して申し訳ないという考えを持っているようです。あなたはまだ若いのだから、いろいろな可能性を奪うわけにはいかない云々。
僕は、彼女の一番そばで生きていけることこそ、僕自身の至福なんです。
彼女も「あなたのそばにいる時間が一番幸せ」と言ってくれます。僕はだから結婚したいんだよ。それだけの理由じゃ弱いのか。
村上さん、僕は彼女を幸せにできますか。
(そると、男性、25歳、会社員)
そんなに好きなら、一緒になるしかないんじゃないですか。なかなかそこまで誰かを好きにはなれないものです。これまで8年間、じっくりとつきあってきたんだから、迷いもないでしょう。子供を作る作らないは、男女の結びつきとはまたべつのものです。何を人生の優先事項にするかは、あなたがご自分で決めることです。
村上春樹拝