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毎日、レコードを洗っています

村上さん、こんにちは。
村上さんはレコードをとんでもない枚数、所有している、と聞いたことがあります。
真偽はわからないまま、質問をさせていただくと、村上さんは、中古のレコードをどの程度の状態ならば、買われるのでしょうか。やはり、傷アリなどはもってのほかですか。
私は仕事場で、ほぼ毎日レコードを洗っています。外国の埃だらけのレコードを、専用の機械で丁寧に洗って出荷する仕事です。でも、今から50年近く前に発売された素晴らしい演奏のレコードでも、ちょっとだけ傷があるだけで、返品になったりします。技術はよくわかりませんが、昔の音があの黒い円盤から聴こえるだけでも、感動的なのに。
一体、レコードに何を求めているのか、と少しおかしく思うのです。
村上さんは多少の針飛び? など、気にしない人だったらよいな、と勝手に思いますが。どうなんでしょう。
(たりこ、女性、わすれた、アルバイト)

そうですか。レコードを洗浄するお仕事をしておられるんだ。僕も日々せっせとレコードを磨いております。僕は機械ではなく、手でせこせこと磨いているのですが。

とんでもない数かどうかは知りませんが、LPの数は一万枚はとっくに超えていると思います。まあ枚数よりは質が問題なんですが。クラシック・レコードのファンにはクレイジーな人が多くて、プチッとでも雑音が入ると駄目という方もおられます。僕はジャズが主体なので、多少のスクラッチは大丈夫です。スクラッチってわりに馴れちゃうんですよね。いつもスクラッチが入るところがけっこう気に入ってしまったりして。

僕は同じレコードで、盤質は良くないけどジャケットが美品というものと、盤質は良いけどジャケットは全く駄目というものを買って、盤とジャケットを交換するということをよくやっています。そうすると完全なものができあがります。ただ問題は、自分が今どんな状態のレコードを所有しているかを覚えきれないことにあります。だんだん頭がこんがらがってきます。おかげで盤質は良くないけどジャケットが美品というものを二つ買ってしまったりします。情けないですね。

村上春樹拝