こんにちは、いつも楽しく著作を読ませて頂いています:)
先ほど風呂で『遠い太鼓』を読んでいたら、村上さんに聞いてみたいことが頭に浮かびました。村上さんのお気に入り・オススメの旅行記はありますか?
僕は3年くらい前に、ポール・セローの『ダーク・スター・サファリ』を駅の本屋で偶然手に取って(そのときはセローの名前も知りませんでした)、夢中になって読んでる内に我慢できなくなって借金をしてトルコを目指す長い旅に出てしまいました(けっきょく1年後にケープタウンのカジノですっからかんになって帰国しました。でもアフリカ陸路縦断は本当に楽しかったです)。旅の間は村上さんの『遠い太鼓』をずっと持っていて何度も読み返しました。だから僕にとってとても大切な本です:)
旅行で抱えてしまったたくさんの借金に未だに苦しめられていますが、それでも最近なんとか翻訳家・ライターとして生計を立てられるようになりました。買い叩かれること甚だしいですが、それでも割合好きなことをしてお金をもらえるんだから文句は言うまい、と日々は励んでいます。たぶん僕にとって文章を書くことの一番の勉強は、村上さんの著作や翻訳作品を読むことでした。この場を借りてお礼申し上げます(たくさん好きな作品がありますが、『意味がなければスイングはない』と『ポートレイト・イン・ジャズ』が大のお気に入りです)。
書いていて気がついたのですけど、僕は村上さんに何かを聞いてみたかったというより、ただファンレターを書きたかったのですね(笑)。だってこれを読んでもらえるのがすごく嬉しいですもの。
今後も著作楽しみにしていますね、グッドラック!
(落花生猿、男性、29歳、翻訳家)
『ダーク・スター・サファリ』、面白いですよね。僕も楽しんで読みました。ポール・セローさんと僕はわりに仲が良いんです。先日も一緒に食事をする機会があったので、あなたからもらったメールの話をしたら、とても喜んでいました。「あの本を読んで、あれと同じルートをたどる旅行をしようと思うなんて、ちょっと常人じゃないな。でもまあ、若いってそういうことなんだね」と言っておられました。
以前、旅行中にかかった病気の話になったら、次々にいろんな病気が出てくるので感心しました。あの人、世界中あちこちで実に様々なひどい目にあってきたみたいです。でもいまだに旅行をやめない。すごくタフな人なんですね。あなたはアフリカ縦断中に病気にはかかりませんでしたか? 僕はメキシコで何度か死ぬ思いをしました。
文章を書いて生活できるようになったということですが、よかったですね。収入の額はともかく、好きなことをして生きていくのがいちばんです。がんばってください。
村上春樹拝