ぼくは中学校で英語の教師をしています。村上さんが前に何処かで、「学校の英語の授業なんて無意味でつまらないものだ」みたいなことを書いていたのを見かけました。自分は無意味でつまらないことを仕事にしているのかなあ、とたまに(割と頻繁に)思います。そこで質問なのですが、村上さんが中学生に戻れるとしたら、どんな英語の授業を受けてみたいですか?
教師になってから、自分が少しずつ「子どもの頃嫌いだったなにか」になってゆくような気がして怖いのです。これが成長なのでしょうか?
(荒川土手の犀の角、男性、25歳、中学校教員)
そんなことを書きましたっけね? たぶん僕が言いたかったのは、日本の学校の英語の授業は、だいたいが受験勉強のためのものであって、生きた英語からはほど遠いものだということだったんじゃないかな。でもまあ、それはそのとおりですよね。あまり実際の役にはたちません。無意味だとまで言ったつもりはないんですが。
ただ僕は高校時代にすごく優れた英語の先生に巡り会いまして、その先生のおかげで英語を読むのがずいぶん好きになりました。授業中はとにかくものすごく厳しいんだけど、それ以外のことは「好きにやれや」みたいな先生でした。細かい規則違反なんてだいたい見逃してくれました。その先生には「英語は細部までしっかり読み込まなくちゃだめだ」みたいなことを叩き込まれました。訳で細部をおろそかにすると、がんがん突っ込まれました。それはとても良い勉強になりました。それとは逆に、授業はぜんぜんつまらないのに、生活指導みたいなことになるとやたらはりきる先生っていますよね。困ったものです。
村上春樹拝