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「文章を書く仕事」がイヤです

村上さんこんにちは。私はいちおう文章を書く仕事をしていますが、「仕事がいやだなあ」といつも思ってしまいます。文章を書いていて、納得のいくものが書けたりすると、「私もやるじゃないか」と達成感みたいなのを持てるのですが、でも仕事をするのはイヤです。

かといって、他の仕事をしたいのかというと、そうでもありません。いろいろ思い浮かべてみましたが、どんな仕事でもしたくないのです。その中で唯一、「やりたくなくもない仕事」が、今の仕事なのです。

食べていくためには仕事をしなければいけないし、締切もあるので(タイトなものが多いです、でも断って依頼がなくなると生活できなくなるし……)、なんとか毎日続けていますが、本当はなにも仕事をしたくないのです。できればこたつに入って寝転んで、ずっと本や新聞を読んだり、録画したテレビ番組を見たりしていたい。最近は寝る前に『羊をめぐる冒険』を読んでいます。寝る前の至福のひと時です。

なんとか続けていますが、いつか心が折れてしまいそうでこわい。村上さん、どうか私の背中を押してください。村上さんが応援してくれていると思うと、がんばれそうです。

ペンネームは村上さんが昔よく使っていた女の子の名前です。村上さんの昔の小説って、同じ名前がが違う小説に普通に出てくるので面白いですよね。
(なおこ、女性、37歳、自営業)

せっかく文章を書く仕事で生活しているのに、文章を書くのがいやなんだ。それはもったいないですね。文章を書いて生活できるのなら、どんな仕事でもやりたいという人は世の中にたくさんいると思いますよ。通勤もないし、上役もいないし、人付き合いの必要もないわけだから、ぐずぐず文句を言っているとバチがあたります。僕の経験からいえば、文章がうまく書けるようになれば、仕事をするのがずっと楽しくなります。たとえどんな仕事であれ、うまくできる余地のあるものは、できるだけうまくやった方がいいです。とても単純な回答になりますが、努力してもっとうまくなれば? 気楽すぎる意見でしょうか? まあ、僕も(ある程度)うまくなるのに時間はかかりましたが、人生最後まで勉強ですから、しっかりがんばらなくては。

村上春樹拝