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「オールド・フォークス」のお気に入りバージョンは?

春樹さん、こんばんは。ジャズスタンダード「Old Folks」についてご質問させて頂きたいと思います。過去にケニー・ドーハム、キース・ジャレット、マイルズ(ズでよかったですよね?)など様々なプレイヤーがこの曲をアルバムに残していますが、「これが最高だよ」という春樹さんお気に入りのバージョンはございますか? 私はパット・メセニーのバージョンが大好きで、20年以上経った今でも聴き飽きません。Question and Answer というアルバムの中でロイ・ヘインズ、デイブ・ホランドのリズム隊をバックに、しっとりとした演奏を聞かせてくれています。またメロディとコードワークのバランスがピアノのように絶妙で、とても1本のギターとは思えない演奏でもあります。
(てんすけ、男性、46歳、会社員)

「オールド・フォークス」、美しい曲ですよね。いろんな人が演奏しています。どんなのがあったかなあと、うちのレコード棚をざっと探してみました。あくまでざっとですが。

僕はやはりマイルズの「オールド・フォークス」がいちばん好きですね。マイルズもいいけど、ハンク・モブレーのソロが絶品です。マイルズのバンドにおける彼のベスト・プレイかもしれない。もちろん「Quiet Kenny」(Prestige)のケニー・ドーハムの演奏も素敵です。バックのトミー・フラナガンのピアノが泣かせますね。あとこの曲で素晴らしいと思うのは、カーメン・マクレエの歌唱。これはほんとうに素直に胸に迫ります。「Great American Songbook」(Blue Note)に入っています。僕的にはこの三つがやはりベストかな。

それから「Sassy」というアルバムに入っているサラ・ヴォーンの歌唱もなかなかいけますよ。わりにさっぱりしている。この歌を最初に歌ってヒットさせたのはミルドレッド・ベイリーですが、彼女の歌唱(1938年録音)も味わいがあります。レッド・ノーヴォとハンク・ダミコの入ったバック・バンドもごきげんです。エタ・ジョーンズがケニー・バレルのギターとジョージ・タッカーのベースをバックに歌う『オールド・フォークス』はしみじみと聴かせます。これは「Love Shout」(Prestige)に入っています。ジョン・ヘンドリックスの「トライデント」でのライブもなかなか良いです。チャーリー・パーカーの演奏はバップ・コーラス入りで、最初は「変なの」と思うけど、聴き馴れると「さすがパーカー」という演奏です。それから忘れてはいけないのは、オスカー・ピーターソンがその全盛期にライブで残した素晴らしいバラード・プレイ。これは「Put on a Happy Face」(Verve)に入っています(客席のざわざわ感がなんともいえずいいんです)。

あとは「The Modern Jazz Sextet」(Verve)でのソニー・スティットの演奏がじっくりと聴かせます。バディ・デフランコの「Bravura」(Verve)でのソロも「うまいなあ」と感心します。ギターではグラント・グリーン(「Grandstand」Blue Note)とハーブ・エリス(「Midnight Roll」Epic)がそれぞれの持ち味を出しています。あとはルー・ドナルドソン(「Lou Donaldson Quintet」Blue Note)も悪くないです。カーリン・クローグもケニー・ドリューのピアノをバックに、ちょっとひねったアレンジで歌っています。比較的新しいところではシダー・ウォルトンとロン・カーターとビリー・ヒギンズの「Sweet Basil Trio」の演奏もあります(これだけがCD、あとはLP)。

ほかにもまだたくさんあるんだけど、きりがないのでやめます。「オールド・フォークス」、これだけ聴けばじゅうぶんかも。キース・ジャレットとパット・メセニーのバージョンはまだ聴いておりません。今度聴いてみますね。

村上春樹拝