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【暮らし】

貧困の現実、分かりやすく  NPO法人「もやい」が解説本 

マニュアルを中心になって執筆した大西連さん=東京都新宿区の「もやい」事務所で

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 新聞で「貧困」の文字を見ない日はないほど、格差が広がっている日本。だが、貧困の現実は見えづらく、貧困に直面していない人は、「本当に貧困なんてあるの?」と思いがちだ。支援活動を行っているNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」(東京都新宿区)が、貧困問題を易しく解説した指南本「貧困問題レクチャーマニュアル」を作った。理事長の大西連(れん)さん(28)に狙いを聞いた。 (白井康彦)

 −制作の目的は。

 今の日本では一カ月に使えるお金が約十万円以下である人が『相対的貧困』。その比率は上がり続け、今は約16%。およそ六人に一人が貧困状態です。その割に、分かりやすく貧困問題をまとめた文書は見当たりません。うちの団体のスタッフなどが貧困問題についてあちこちで講演したりしていますが、それだけでは世間の人に十分に伝わらない。そこでマニュアルを作りました。

 −「頑張って働けば貧困にならない」と思っている人が多いです。

 そうですね。でも、頑張れば何とかなると安易に言いにくくなってきているのが現実です。非正規労働者として雇われると正社員になることは難しいし、過酷な労働条件で労働者を使いつぶすブラック企業も目立っています。

 −女性や障害者が貧困に陥りやすいことに気がつかない人も多い。

 ともに待遇のいい仕事にはつきにくくて、経済的に自立しにくい。それをカバーする社会保障の仕組みも不十分です。

 −生活保護に関しては、働けるのに受けている人が多いと感じている人がいます。

 それは明らかな誤解です。昨年八月時点で、生活保護世帯は高齢世帯が47%、傷病・障害世帯が28%、母子世帯が7%。就労が難しい人が多いのが実態です。残り18%の「その他の世帯」の平均年齢も五十代半ばで、働き口を見つけにくいのです。

 −日本では「生活保護を受けるのは恥」という意識が強いですね。

 恥の意識、親族に迷惑をかけたくないという意識、制度への理解不足などがあり、生活保護が受けられる人の中で実際に受給している人の割合を示す捕捉率は15〜30%ほどと言われています。欧州諸国に比べると格段に低いのが現実です。マニュアルの最後に生活保護申請書を載せておきました。自分で書いてみると制度が理解しやすくなるでしょう。

 −ホームレス問題や生活保護問題の記述が多いですね。

 もやいが設立されたのが十四年前。それからずっとホームレス支援が中心でしたので。近年、野宿の人の数は確かに減りました。ただ、それはホームレス状態の一部にすぎないことが分かってきました。友人宅を転々とする人、ネットカフェやサウナなどに寝泊まりしている人、ファストフード店で夜を明かす人などです。ホームレス状態の人はむしろ増えているでしょう。

 −どんな活用法ができるんですか。

 高校や大学、市民団体などで活用してもらいたい。講義を受けた人たちで話し合ってほしいです。

      ◇

 マニュアルはA4判四十八ページ。非正規労働の問題点や国・自治体の役割、市民活動の方法などを分かりやすく説明している。「ネットカフェ生活にはいくらかかる?」などの設問もあり、グループ学習ができるようになっている。同NPOのホームページからダウンロードできる。「貧困問題レクチャーマニュアル」で検索。

 

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