河村能宏、神庭亮介
2015年5月5日19時39分
ダウンロードやストリーミングといった音楽配信サービスが登場し、国内外の音楽産業はCD一辺倒ではなくなった。そんな中にあって、日本を代表する音楽チャートのオリコンは、依然CDの売上高を重視する。なぜなのか。小池恒社長に話を聞いた(1月16日取材)。
■配信ランキングへの関心「薄れている」
――オリコンの音楽ランキングの役割をお聞かせください。
基本的には、ブランディング機能、プロモーション機能、販売促進機能、収入予測機能、マーケティングツールの五つに分けられると思います。アーティストが1位にこだわるのはもちろんのこと、ファンも応援しているアーティストには1位になってもらいたい気持ちがある。そこから、プロモーション機能でヒットが広がっていくわけです。
――ネット配信をはじめ音楽の聴き方が多様化し、「既存のCDランキングだけでは、何が流行しているかつかめない」という声も聞きます。
ここ何年か、「最もヒット感を感じることができる音楽ランキングは何ですか」という調査を続けています。確かにある時期、CDランキングと配信ランキングとが関心度において接近した時期はありました。しかしここに来て、スマートフォンの普及で「着うたフル」の利用者が減少。逆に配信ランキングへの関心が薄れていっています。
加えて、嵐を筆頭にしたジャニーズ勢など、パッケージの販売にこだわっていて、配信で出していないケースもある。そういう理由もあって、配信などのランキングは社会的関心を失っているな、というのが我々の実感です。
――CDランキング1位と配信ランキング1位とを比べた場合、多くの人が前者の方が「売れている」と感じている、と。
そういう要素も含まれている可能性はあると思いますね。
――とはいえ、ダウンロードや動画サイトなど、聴き方は多様化しています。CD以外に、配信の売り上げやラジオの再生回数を反映した複合チャートを提供する業者もあります。オリコンのランキングにそうしたデータを取り込まないのはなぜですか。
我々のランキングは「本当に正しいデータで、ヒット感を伝えるものでなければならない」というのが基本理念です。動画サイトの再生回数を加算するとしても、その再生回数は恣意(しい)的に操作される恐れがあります。そもそもウチのランキングの対象は「音楽を聴くことに対価を払う」ことを重視していますから、簡単には取り込めません。
また、配信については、ジャニーズのような大きなところが参戦していません。それに、ランキングを構成する要素が変わると、数十年前のデータと比較できないという問題も出てきます。
――配信データをランキングに反映することはまったく考えていないのでしょうか。
もちろん検討はしています。ただ、アーティストによっては「パッケージしか出さない」というポリシーを持っている人たちもいますよね。そういう人たち全員の協力を取り付けるのが、大変困難なんです。それまで1位の常連だったアーティストが、10位にも入らないということが起きるかもしれない。アーティストのブランディグの面で逆の作用が起きるわけです。その調整に時間がかかりますからね。
――例えばの話ですが、ミスターチルドレンやジャニーズ勢が音楽配信を全面解禁すれば、配信の売り上げをランキングに取り込むハードルはぐっと下がりますか。
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