(英エコノミスト誌 2015年5月2日号)

中国は、危険をはらむ対立の中で勢力を広げようとしている。

米大統領、南シナ海問題で中国に警告

南シナ海・南沙諸島(英語名:スプラトリー諸島)のジョンソン南礁で中国が進めている工事を写したとされる写真。フィリピン外務省提供〔AFPBB News

 中国は、南シナ海の広大な海域の領有権を強固なものにしようと、数カ月にわたって突貫工事で岩礁の埋め立てを進めてきたが、2014年11月に、それよりももっと微妙なアプローチを試みた。バージニア州アーリントンに1つのシンクタンクを開設したのだ。

 このシンクタンクは、南シナ海北部の熱帯地域に浮かぶ(そして紛れもなく中国領土の)島、海南島にある中国南海研究院の前哨基地と言えるものだ。

 中国は東南アジア諸国の異論をよそに、戦略的に重要な南シナ海の大部分を自国領だと主張している。

 新しいシンクタンクの役割の1つは、根拠の曖昧なこの中国の主張の正しさを学術的に証明することにある。

 このバージニア州の新シンクタンク、中国米国研究所(Institute for China-America Studies)が、4月16日にワシントンのホテルで会議を開いた。このシンクタンクに中国政府のコネクションがあるのは明らかだ。

懸念を深める周辺諸国

 中国の指導者たちの大きな尊敬を集める元国務長官のヘンリー・キッシンジャー氏は、事前に録画したビデオコメントを寄せ、中国政府と米国政府の結びつきの重要性を語った。

 中国の崔天凱駐米大使も、直々に会議に出席した。崔氏は会議の出席者に向けて、中国は南シナ海で「節度をもって」行動していると述べる一方で、南シナ海での国益を積極的に守るつもりだとも語った。

 自国の領海の主張(中国の公式地図では、驚くほど荒っぽい破線で示されている)に学術的な正当性を与えようとする中国の取り組みが、米国や東南アジアの多くの人々を納得させられるとは考えにくい。